法人本部

道総研セミナー
「平成30年北海道胆振東部地震から1年」

  道総研が日々取り組んでいる研究の中から、今回は「地震災害」をテーマに、地質研究所と北方建築総合研究所で行っている研究をご紹介し、約60名の方々にご参加いただきました。

  • 日時 令和元年9月7日(土) 15:30~16:30
  • 場所 紀伊國屋書店札幌本店 1階 インナーガーデン(札幌市中央区北5条西5-7sapporo55)
  • 主催 地方独立行政法人 北海道立総合研究機構
講師が話している写真 

こんなお話をしました

講師:道総研 環境・地質研究本部 地質研究所  主査 廣瀬 亘

「北海道で起きた過去の地震を振り返る」

  北海道では、千島海溝沿いで今後30年以内に起きる可能性が高い巨大地震や、内陸の活断層に関連する地震など、今後も大きな地震が繰り返し発生することが予想されます。
強い揺れや地盤災害、巨大な津波など、過去の地震で何が起きたのか、そして被害を少しでも小さくするために今からどのように備えればよいのか、改めて見直しましてみましょう。

   地震による強い揺れは、様々な災害を引き起こします。どのような災害が起こる可能性があるのかは、地形・地質の特徴や過去にそこで起きたことから、ある程度予測することができます。

   北海道に強い揺れをもたらす地震は大きく2つに分けられます。
一つは陸で起こる地震(2018年北海道胆振東部地震など)です。震源地が町に近いので、地震規模が小さくてもきわめて強い揺れが発生し、大規模な地盤災害や建築物への被害をもたらします。

   もう一つは海で起こる地震(2003年十勝沖地震など)です。地震の規模が大きいため広範囲で強い揺れが発生し、津波を伴うことも多いです。
十勝沖地震では、震源に近い十勝地方は津波や大規模な液状化、震源から150km~200km離れた石狩地方や釧路地方でも地盤災害や斜面崩壊など、様々な災害が発生しました。一方で、特に十勝地方では、住民の方々が過去の大地震の経験を踏まえた備えをしていたこともあり、地震規模の割にけが人など人的な被害が小さい傾向がありました。

   北海道南西沖地震では、震源のすぐそばにあった奥尻島が、地震発生から10分後に最大高さ31.7mの大津波に襲われました。津波警報や避難指示を待ってからの避難では間に合わない場合があることが、大きな教訓として残りました。
自分たちが暮らしている土地で何が起きるのかを知り、いざという時どのように行動すればいいか、大切な人たちと普段から話し合っておくこと、できる対策を一つ一つ確実に行っていくことが大事です。


講師:道総研 建築研究本部 北方建築総合研究所  研究主幹 戸松 誠

「北海道胆振東部地震における建物被害とその対策」

  平成30年9月6日、震度7を記録した北海道胆振東部地震では、多くの建物損害と死傷者が発生しました。道総研では、今回の地震で発生した建物被害の調査を行いました。

   建物の倒壊は、震度6 強を記録したむかわ町役場付近の比較的古い店舗併用住宅に集中していました。また、安平町の市街地では、外壁を組積造(レンガ積み等)とし、床組、小屋組を木造とした比較的古い建築物が大きな被害を受けていました。

   この他にも、屋根が重い家、筋かいが少ない家、壁の配置バランスが悪い家が特に地震に弱く、対策が必要な建物です。自分の家に危険があるのか、「誰でもできるわが家の耐震診断(一般財団法人 日本建築防災協会)」(http://www.kenchiku-bosai.or.jp/taishin_portal/daredemo_sp/)を実施し、把握しておくことも大切です。診断で危険が判明した場合は、北海道庁でも無料の耐震診断を行っていますので、行政機関にご相談ください。

   また、家具の転倒にも気をつける必要があります。阪神・淡路大震災(1995年)では、死者の約8割が木造住宅などの倒壊や家具の下敷きによる圧死や窒息死でした。


講師:道総研 建築研究本部 北方建築総合研究所   研究職員 川村 壮

「北海道胆振東部地震時に発生したデマ情報について」

  北海道胆振東部地震では、電源喪失による全道的な停電に始まり、一部地域の断水、交通機関の運休、教育機関の休校、医療機関の外来受入停止など様々な社会混乱が生じました。
停電で情報が手に入りにくい中、主にインターネット上、特にTwitter等のSNSで真偽不明な情報(デマ)が拡散されてしまいました。

   断水や教育機関の再開に関する情報発信の状況は自治体によりに差があり、被災3町のSNSによる情報発信が確認されたのは9月8日でした。この間、「より大きな地震が起こること」を懸念するツイートが、「自衛隊からの情報」「○時間後に本震が起こる」などの誤情報が追加されたデマに変化し、Twitter等で拡散されました。
   その後、9月8日20時頃に苫小牧市等の公的機関が打消し情報を発信すると、こうしたデマツイートは収束しました。公的機関によるデマの打消し情報は、デマの収束に有効だったと考えられます。

   情報収集の手段が限られる中で、デマを信じたり不安感を覚えたりした人が多くいました。苫小牧市では、デマの拡散があった地震発生2日後に避難所への避難者が増えるなど、実際の避難行動に結びついた事例もみられました。

   デマの特徴として、「~らしい」「~から聞きました」「~とのこと」といった伝聞調であること、根拠がはっきりしないこと(「知り合いの水道局の人からの情報では~」など、一見すると公的な情報に見えるが、はっきりとした情報源が不明)が挙げられます。これらに当てはまるものが必ずデマというわけではありませんが、注意が必要です。

   デマに振り回されて慌てて行動すると、かえって危険に晒されることもあります。デマの特徴を把握し、公的機関等の情報源を確認することが重要です。

講演資料

資料1(PDFファイル)
講演資料のPDF

資料2(PDFファイル)
  講演資料のPDF2

案内チラシ

案内チラシ(PDFファイル)
開催案内チラシ