法人本部

第9話 雪かき

雪かきを安全に行うための工夫 (H25.12)

道総研工業試験場 吉成 哲 (よしなり さとし)

北海道では雪景色の日が多くなり、クリスマス気分を盛り上げてくれますが、同時に豪雪で苦労した昨年の記憶が蘇ってきます。そこで、つらい雪かきを安全に行うための作業方法や、体の負担を軽減するスコップについてご紹介します。

雪の降り積もった朝などは、出かける時間までに雪かきを終え、人や車の動線を確保しなければなりません。準備も早々にいきなり雪かきをしてしまいがちですが、はやる気持ちを抑えて、まずは準備運動です。体がほぐれて血管が広がり、血圧が上がりにくくなります。

冬の暮らしに欠かせない雪かきですが、日常生活のなかでは最も負担の大きな作業といえます。実際に雪かき中の運動強度を測定したところ、テニスのダブルスや水泳と同等となりました。高齢の方などは無理しすぎないよう注意が必要です。人と話せるくらいの楽なペ-スが望ましく、血圧や心拍数の上昇も抑えられます。雪を持ち上げる時と放る時、スノ-ダンプを押す時など、やむを得ず力を入れる際には、お腹に力を入れることで腰部の安定性を増すことができます。また、息を止めると急激な血圧上昇を招き、血管や心臓に大きな負担がかかるため注意が必要です。

雪をすくい上げる時は前かがみになりますが、持ち上げの支点になるのは腰椎です。雪の重さは数kgでも、スコップの柄が長いため腰椎にはその数倍の力がかかります。加えて、上半身の重さも支えるため、腰部にはとても大きな負荷がかかります。また、利き手の関係からか、雪を持つ方向を体の左右どちらか一方に決めている方も多く、片側の背筋がより早く疲労します。対策としては、上半身をなるべく立てる作業姿勢としたり、スコップを持つ方向を時折入れ替えるなどの方法が考えられます。

UDスコップの写真  このほか、工夫をこらした道具の使用で負担自体を減らすことも可能です。道総研工業試験場では、なるべく体の近くで雪をすくうことと、体の傾きを少なくすることの両立を目指して、S字状に曲った柄を持つスコップを開発しました。この除雪具は「UDスコップ」として製品化され、2008年のグッドデザイン賞を受賞しています。

それではどうぞ、安全な雪かきに留意され快適な冬をお過ごしください。


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◇「ユニバ-サルデザインスコップの開発」をご紹介します
http://www.hro.or.jp/list/industrial/research/iri/jyoho/casebook/book/2008.pdf

◇浅香工業株式会社(UDスコップの製造元)
http://www.asaka-ind.co.jp/

◇グッドデザイン賞受賞概要
http://www.g-mark.org/award/describe/34059