農業研究本部

水稲新品種「彗星」の育成

水稲新品種「彗星」の育成

田中一生、平山裕治、菅原彰、吉村徹、前田博、本間昭、相川宗嚴、田縁勝洋、丹野久、菅原圭一、宗形信也、柳原哲司、松川勲

北海道立農試集報.95,1-12 (2011)

 粳米の酒造用水稲新品種「彗星」は,1996年に北海道立中央農業試験場で交配し,選抜し育成され,2006年に北海道の奨励品種に認定された。「彗星」は「北海278号(初雫」と「空育158号(吟風)」との交配後代から育成された。
 「彗星」の主な特性の概要は以下の通りである。出穂期・成熟期は「吟風」,「初雫」「きらら397」並である。熟期は中生である。稈長は「吟風」,「きらら397」並で,穂長は「初雫」より長く,「吟風」,「きらら397」より短い。穂数は「きらら397」より少なく,「吟風」,「きらら397」より多い。草型は「吟風」,「初雫」と同様“中間型”である。“少短”の芒を有し,ふ先色は“黄白”である。穂ばらみ期の耐冷性は「吟風」,「きらら397」に優り, 「初雫」に劣る“強”である。開花期耐冷性は「吟風」並の“極弱”で,「きらら397」に劣る。いもち病の圃場抵抗性は,葉いもち、穂いもちともに“やや強”で「きらら397」に優り,真性抵抗性遺伝子の“Pik”を持つ。耐倒伏性は“やや強~強”で「吟風」並である。収量性は高く「初雫」並である。千粒重は「吟風」,「初雫」,「きらら397」より重い。心白発現率は「吟風」より少なく,大きさも小さい。酒米としての玄米品質は「吟風」並である。白米の蛋白質含有率は「吟風」より低く,「初雫」,「きらら397」並である。精米時間は「吟風」より長く,吸水時間も「吟風」より長い。「吟風」同様清酒の製造課程の作業性は良好である。
 以上の特性から,「彗星」を「初雫」のすべてと不適地で作付けされている「吟風」「きらら397」の一部に置き換えて普及させることによって,高品質な酒米の安定生産と北海道米の販路拡大が期待される。


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