農業研究本部

春まきコムギ新品種「はるきらり」の育成

春まきコムギ新品種「はるきらり」の育成

中道浩司、佐藤導謙、吉村康弘、小林聡、西村努、池永充伸、足利奈奈、荒木和哉、柳沢朗、今友親、吉田俊幸、土屋俊雄、白井滋久、鈴木孝子、白井和栄、奥村理

北海道立農試集報.95,25-37 (2011)

  「はるきらり」は1994年から2001年まで北海道立中央農業試験場(長沼町)で育成が行われ,その後北海道立北見農業試験場(訓子府町)において育成された硬質春まきコムギである。「はるきらり」は, 「C9304/Katepwa//春のあけぼの」の3系交配に由来する。「C9304」は高いバイオマスを保有する中央農試育成系統である。「Katepwa」は製パン性に優れるカナダの硬質赤粒春まきコムギである。「春のあけぼの」は北見農試育成品種であり,やや晩生で,「ハルユタカ」や北海道の基幹品種「春よ恋」より穂発芽耐性が優れる。
  「はるきらり」の成熟期は「ハルユタカ」,「春よ恋」並の中生であり。耐倒伏性は“やや強”で,多収で,うどんこ病抵抗性は“中”で,赤さび病抵抗性は“強”である。「はるきらり」の赤かび病抵抗性は“中”であるが、子実中のデオキシニバレノールの蓄積は「ハルユタカ」,「春よ恋」より少ないので,デオキシニバレノール汚染の低減が期待できる。「はるきらり」は「ハルユタカ」,「春よ恋」よりも穂発芽耐性が明らかに優れ「AC Domain」並である。蛋白含量は「ハルユタカ」,「春よ恋」よりやや低いが,高分子グルテニンサブユニット構成が「Katepwa」と同じであるので,製パン性は「ハルユタカ」より優れ「春よ恋」に近い。「はるきらり」は,多収で,子実中のデオキシニバレノール蓄積が少なく,穂発芽耐性に優れ,製パン性が良好であることから,2007年に北海道の優良品種に認定された。また,2007年に「小麦農林169号」として農林登録された。


全文(PDF)