農業研究本部

秋まき小麦のタンパク質含量と糊化特性が加工適性に及ぼす影響

奥村理

北海道立農試集報.94,89-93 (2009)

 日本めん用小麦の主力品種である秋まき小麦「ホクシン」を用いて,小麦粉品質と加工適性の関係を調査した。小麦粉のタンパク質含量が高くなるのに伴い,粉色L*(明度)が低くなり,製めん適性は低下した。一方,タンパク質含量が高くなるのに伴い,ファリノグラフ特性値のAb(吸水率),DT(生地形成時間),Stab(安定度)及びvv(バロリメーターバリュー)は上昇し,Wk(弱化度)は低下し,製パン試験におけるパン比容積は高まり,製パン適性はパン用春まき小麦に近づいた。このことから,タンパク質含量が高い「ホクシン」は,パン用春まき小麦に比べて製パン性が劣るものの,パン用として利用できる可能性もあると考えられた。また,RVA(ラピッドビスコアナライザー)最高粘度が50RVU未満の小麦粉は350RVU以上のものと比較して,Wkが大きく,生地のべたつきが大きく,製パン時の作業性が劣るとともに,10RVU未満の小麦粉については,クラム(パン内相)の物性も劣った。このことから,最高粘度が低い「ホクシン」は,日本めんに用いる場合と同様,パン用としての利用も困難であると考えられた。


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