農業研究本部

道南地方に分布するろ土の特性とその改良に関する試験
第1報 理化学的性質と燐酸固定について

南 松雄、佐藤 亮八、高田 亨

北海道立農試集報.5,24-38 (1960)

 道南地方に分布するろ土の理化学的性質と燐酸固定に関する諸種の試験を実施して次のような結果をえた。 

1.本土壌は腐植にすこぶる富み、粘性および凝集力が乏しく、保水性の強い軽鬆な土壌である。無機膠質が少なく、置換容量が極めて高く、養分の保持ははとんど腐植により左右されて、反面、遊離礬土含量が極めて高い。
2.本土壌の全燐酸含量は0.3%程度で、普通土壌に比較し特に低い値とは考えられ ないが、可給態燐酸含量が10mg前後で著しく低く、かつ本土壌の燐酸の 60~70%以上が有機態燐酸の形で存在している。また本土壌の燐酸固定力が 強いのは遊離礬土含量の大なるためによることがわかった。
3.Waksman法の腐植組成中、β-fraction含量が極めて高く、礬土含量の高い層ほど高い点より、本土壌は一般に礬土と結合している型の腐植の多いことを示す。 またSimon法によって腐植の性質を検討した結果、NaFのような石灰沈澱剤に対する溶解度が極めて少ない。しかし、酸で前処理を行なって鉄、礬土を除去する と溶出する真性腐植酸含量が著しく増加した。最地表部を形成するろ土の腐植は 石灰と弱く結合している粗腐植に富み、易分解性を多く含んでいるが、地中に埋没されて存在しているろ土の腐植はほとんど土と結合せる型の腐植が多い。
4.植木鉢および圃場試験の結果、本土壌においては窒素もやや欠乏しているがやは り最少養分律を支配しているのは燐酸であって、その効果が極めて顕著である。 従って本土壌に対する施肥法としては窒素の過用を避けて窒素施用量の6~8倍 量の燐酸を施用することが必要である。また、燐酸肥料の多施は作物の収量を増 大させるのみならず、土壌中の可給態燐酸含量を著しく増加させ、燐酸固定力を 漸減せしめることが分った。


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