農業研究本部

水稲に対する鉱滓の効果について

南 松雄

北海道立農試集報.5,39-53 (1960)

 昭和31年度より3カ年にわたって、珪酸の補給資材としての鉱滓の利用に関して、 水稲に対する鉱滓の肥効試験を実施して次のような結果をえた。 

1.水稲に対する鉱滓の施用効果は一般に生育量の増大となってあらわれ、泥炭土、 火山性土、腐植過多の湿田土壌のごとく、窒素潜在地力の高い水田では明らかに その効果が認められた。一方、普通鉱質土壌水田においては5%内外の増収を示 した所と、ほとんど効果がみられない所もあるので鉱質土壌に関しては結論を出せなかった。しかし鉱滓の施用によって分蘗が抑制され、後期黄熟がやや遅延す る傾向が認められた。
2.鉱洋の施用によって水稲休内の窒素含有率が低下し、蛋白態窒素含量、珪酸含量 及びSiO2/Nが増加して稲熱病に対する抵抗性が高まり、しかも、窒素過多施用の 害をも軽減する点より考えて、鉱滓を施用した場合には窒素質肥料の増施も可能 なものと考えられる。また、鉱滓の施用量は水稲の生育、収量及び経済効果の点より考えて10a当り187.5kg程度が適量と思われる。
3.各種鉱滓の施用効果を比較すると、平炉滓より珪酸含量の高い高炉滓、Fe-Mn滓の方が幾分まさるようである。一方、粒度の大小間には明らかな傾向が認められな い。
4.鉱滓の施用によって水稲の生育初期の燐酸含有率が低下し、その分けつが抑制さ れる点より考えて、本道のごとく、稲作期間の短かい地方では水稲の初期生育の遅延が収量に対して重要なる因子となるため、鉱滓を施用した場合には水稲の初 期生育の促進と茎数確保のために燐酸肥料の多肥が望ましいと考えられる。


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