農業研究本部

水稲の冷床苗栽培からみた直播栽培  特に直播収量との関係

柴田 和博

北海道立農試集報.6,22-31 (1960)

1.水稲直播栽培の適品種の選択を主目的として、直播栽培と冷床苗栽培との関係に ついて若干の考察を行なった。資料は上川支場育成系統生産力検定本試験成績の中から最近の豊凶年次各2カ年ずつ計4カ年を用いた。
2.その結果、供試品種の平均では冷床苗栽培の収量が直播栽培にくらべ 10a当 り玄米重で20~30kg多かった。この差はその年の豊凶とは無関係と思われるので、冷床苗栽培は冷害対策としてよりも一般的な増収対策と考えられる。 しかし、年次、場所、施肥量および品種により収量差はかなり違っていた。なお これには両栽培法の個々に対する実際場面での技術の程度も関係するであろうと 推察される。
3.直播栽培と冷床苗栽培との収量差は出穂期と穂数差で説明される年も1カ年あっ たが、ほかの3カ年は明かでなかった。供試品種の中で収量差少なく直播栽培向 適品種とみらるのは「フクユキ」「キタミノリ」および「水稲農林15号」であ った。これら3品種以外にも特定の年だけについてみれぱ両栽培法で収量差の少ないものがあったが年次差が大きかった。
4.直播栽培向き適品種の具備すべき特性として従来、初期生育、草型、強稈性、耐冷性、早熟性などが強調されているが、本資料ではこれら単独には明確でなかっ た。とくに草型と関連の深い穂数と直播収量とはほとんど無関係であった。
5.現在直播栽培で多収な品種を選択する一般的な方法としては、まず第一に各場所 ごとに冷床苗栽培で多収な品種を選び、さらに他の特性に大差なければそれらの中で冷床出穂期の早いものを選ぶのが適当と考えられる。本文を草するに当り、 資料の整理に御協力をいただいた野村稔、松田充成ならびに菅原市男の諸氏に感謝する。


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