大豆品種における地域性の統計的分析
藤盛 郁夫
北海道立農試集報.6,68-76 (1960)
1957年、1958年の2カ年、北海道農試作物部、道立農試十勝支場、同北見支場、同天北支場および渡島支場で実施した大豆品種の地域適応性検定試験の成績に基づき、 生育日数については早生群より14、中、晩生群より7、子実収量および1,000粒重に ついては早生群より14、中、晩生群より10の共通した品種・系統を選出して、そ れら試験実施場所に対する系統の地域性を分散分析、順位相聞および変動係数より検討した。
1.生育日数:年次によって系統の地域間反応に差を生ずることもあるが、相関係数 に見られるように、年次およぴ地域間の系統の順位はかなり密接で、全体的にみると早生群で2カ年、4試験地を通じて、供試系統の平均値を示した「鈴成」に 此し、「北見白」、「大谷地2号」、「本系20号」および「十育84号」は生 育日数が長く、「奥原1号」「本系1号」、「本系2号」は短かく、地域による 早晩生の変化は少ない。しかし、中、晩生群では4試験地で「本系5号」、「本系6号」北見では「北見白」の生育日数が長く、短かい系統として作物部での 「十育86号」、十勝の「大谷地2号」があげられ、若干特徴的になっている。
2.子実収量:これに関する地域性は、はっきりと数字で表示され、年次、地域によ って系統の反応が異なり、早生群では北見の年次間相関、地域間では作物部と十勝の関係が有意でなかった反面、作物部と天北の関係がきわめて有意に検定され た。また中、晩生群において、作物部対渡島の関係は密接であるが、それら2地 域に対するほかの地域との関係には有意性を認めることはできなかった。しかし 十勝、北見、天北相互の間では高い相関々係にあった。 両年、4試験地を通して供試系統の地域性をみるに、いずれの地域においても有 意に多収を示す系統はあるが、中にはいかなる地帯とも収量傾向を異にする系統 もあった。たとえば、早生群において「本系20号」は全試験地とも多収であったが「鈴成」「十育89号」は十勝では多収であるが、作物部、北見および天北 で少収、「北見白」は北見、十勝で多収性を示したが作物部で少収であった。中、 晩生群においても、地域性は顕著で「本系24号」は全試験地とも多収性を 示したが、「本系6号」は作物部では多収であったが、十勝、北見、天北ではいずれも最低収に留まり、また「北見白」は反対に十勝、北見および天北で多収で あったが作物部では少収に終わっているなどである。
3.1,000粒重:生育日数と同じように地域性は認められず、系統の年次、地域間の相 関々係はきわめて密接で、大粒種子の系統はいかなる地帯においても大粒種子を生産している。すなわち、供試系統中、「北見白」に比し有意に大粒の系統は 「十育86号」、「十育87号」、「本系6号」、「本系24号」、「奥原1号」 および「大谷地2号」などであって、これら系統の粒大におよぼす地域の影響を ほとんど認めることができなかった。
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