農業研究本部

根釧地方泥炭の理化学的特徴と開発に伴う土壌肥料学的諸問題について
第1報 釧路泥炭の一般的特性

早川 康夫

北海道立農試集報.6,106-123 (1960)

 釧路泥炭地開発方式基礎調査の一環として釧路市昭和地区低位泥炭地に実施中の北海道開発局官房開発調査課企画にかかる排水管理試験の一部を分担したが、まずこの地区の泥炭の特性について北海道の標準泥炭とみなされている美唄泥炭と比較調査し てつぎのような特徴のあることを認めた。すなわち、 

1.肥料3要素鉢試験の結果によれば釧路低位泥炭下層土を始め釧路・根室地方の泥 炭には燐酸欠乏の徴候があった。また無窒素区では下層土よりも上層土における 生育が良好であって一般に地表部の黒化あるいは分解度の低い泥炭の方が窒素の 天然供給に富む傾向がみられた。
2.釧路・根室地方の泥炭には火山灰が多量に含まれておりこの影響が大きかった。 とくに下層土にはSO3が蓄積して酸性も著しいが、これに伴なって易溶性の礬土 が多く含まれていたので可給態燐酸は乏しかった。
3.火山灰の混入によつてこの地方の泥炭の炭素含有率は美唄のものに劣っていたけれども、窒素含有率は比較的高く無機態窒素量も多かった。
4.昭和地区の泥炭ではSO3量の特別に多い層が地表下41~51㎝の厚さわずか10 ㎝の間に挟存していたが、これは火山噴出の際火山灰に伴なって降下した硫黄が 酸化され洗脱再集積したものと思う。


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