農業研究本部

大豆の生育異常に関する調査

藤森 郁夫、砂田 喜与志

北海道立農試集報.7,9-15 (1961)

 1959年から1960年にかけて十勝地方を中心として大豆に生育異常個体が多発した。 この異常個体は、草丈、分枝長、主茎節数および稔実莢数等が正常なものの60%程度にとどまり、子実重量も半減しこの種の個体を多発した品種は著しい減収を示した。  大豆の産地および品種別に異常個体の発生頻度を調査した結果、アメリカ産、スェ ーデン産および中国産大豆には全く発生せず、府県産大豆では、わずかに1品種にみ られた。これに対し、本道産大豆品種では約半数に発生し、「奥原1号」、「鈴成」 「ホッカイハダカ」、「トカチシロ」、「十育94号」などではその頻度が高かった。  播種期試験、施肥用量試験について、発生頻度を調査したところ、次の事が明らか になった。早播き区(5月10日)で多発した品種も標準播種期(5月20日)および晩播区(5月30日)では全く出現をみないか、大幅に減少した。また、無肥区で多発した品種も、標準施肥区あるいは多肥区では著しく減少し、窒素と燐酸の組み合わせに よる試験からは、燐酸施用による発生頻度減少の効果は認められず、窒素によってのみ影響されることを知った。  また、異常個体種子の次代に及ぼす影響を調査した結果、異常個体の発生頻度は高く、子実は一般に小粒化する傾向を示したが、その他の形質では品種によって異なり 一定の傾向を示さなかった。  以上の調査で、異常個体の発生が、発芽当時の気象および土壌的要因と関連しているものと推察されたが、その生理的解明は今後の研究にまたなければならない。


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