農業研究本部

大豆の無機栄養に関する調査
第1報 生育に伴う吸収移動経過について

平井 義孝

北海道立農試集報.7,47-57 (1961)

 大豆の施肥法を合理化するための基礎資料をうる目的で、「大谷地2号」「十勝長葉」を供試し、生育過程における窒素・燐酸・加里及び石灰の吸収移動の経過について調査した。その結果 

1.各成分とも吸収量は開花後に盛んな増加がみられ、総吸収量は子実肥大期以後の変化は少なかった。茎葉及び莢の窒素・燐酸及び加里吸収量は莢伸長期ころに極大に達した以後減少し、石灰吸収量は茎以外の器官では極大後の減少はほとんど みられなかった。
2.移行率は窒素・燐酸が高く、加里はこれにつぎ石灰はわずかであった。 移行量は葉が最も多く、養分の貯蔵の場としても葉の役割りは大きいと考えられた。しかし石灰は茎以外の器官からの移行はほとんどないようである。
3.ほかの器官からの移行成分量のみでは、子実の完熟ができず、登熟中もこれら養 分は供給される必要がみられ、ことに窒素・燐酸にその傾向が大である。
4.吸収量は、窒素>加里>石灰>燐酸の順位であるが、収奪量は窒素>加里>石灰 ・燐酸の順位であった。なお「十勝長葉」は「大谷地2号」より各成分の吸収量は多く、このことから品種に応じた施肥が必要と考えられた。
5.窒素・加里の施肥についてはさらに検討を要するが、燐酸は土壌燐酸をかなり吸収し、かつ生育後半まで吸収されることが明らかになったので、この点は施肥技術の面で検討すべき点が多い。


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