農業研究本部

北海道におけるアカザモグリハナバエの生活史に関する研究
第3報 休眠と生活史の関係

奥 俊夫

北海道立農試集報.8,66-73 (1961)

 1958~'60年に札幌市においてアカザモグリハナバエの休眠蛹について調査し 次の知見を得た。 

1.休眠蛹は生態上次のように類別できる。
夏眠蛹: 初夏に形成され秋に羽化するが発生は少ない。
越年蛹: 年中発生すると思われるが、8月中旬までの発生はきわめて少なく、同月 下旬から9月上旬にかけて急激に増加する。これらは更に生理的性質が異 なると思われる2型に区別できる。すなわち、その第1は低温接触しなく ても羽化できるが、年内に発育の進む可能性は少なく、9月中旬以前に多 く形成される。第2はある期間低温接触しなけれぱ羽化できないもので9 月中旬以降多くなる。これら両者は翌春ほとんど同時に羽化すると思われ る。
2.越年蛹は5℃150日冷蔵によって完全に休眠消去されるので、野外では春まで に休眠を終わり地温の上昇と同時に発育を始めると思われる。休眠後発育の臨界 温度は約6℃有効積算温度は200~240日度と計算され、休眠蛹の位置する 部分の地温を知ることによって成虫の羽化時期を推測できると思われる。
3.休眠蛹の発生期は毎年同一の傾向を示し、晩夏世代の蛹化が8月中に終われば50 %以上羽化して秋世代の発生が多くなり、蛹化が9月3半旬以降になると秋世代 はほとんど発生しない。道北、道南の一部では晩夏世代の蛹化が8月中になるの で毎年秋世代が発生すると考えられ、道央では低温年には晩夏世代の蛹化が9月 に入るので、このような年には秋期発生は非常に減少すると考えられる。


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