農業研究本部

ビートトップの飼料的特性とその偏用飼養による生理的影響に関する試験
特に蓚酸、saponin、NO3-Nなどの生理作用と灰分代謝、下痢症状、産褥性血色素尿素症との関係について

坪松 戒三、斉藤 久幸、谷口 隆一、岸 昊司

北海道立農試集報.8,74-106 (1961)

 Beettop飼料の成分と生理作用を充分把握し、多給偏用による生理的影響がどの程 度のものか、生理作用を及ぼすのはBeettop中のどの成分か、どのような機序でおこ るのか、そしてその予防対策としてどのような方法をとったらよいかなどを推論する ために、乳牛に平均80kgの多給した試験と綿羊ではそれにふすまとCaなどを添加 した試験を実施した。  Beettop袷与時の水溶性蓚酸は第1胃内分解またはCaと沈澱して不溶性塩になり全く 糞中にあらわれない。不溶性蓚酸中の蓚酸も一部分解し、遊離したCaは体内に吸収 されうるようになるけれども、遊離のまま糞中に排出される部分も多い。  Ca過剰Beettopの場合は遊離のCaが多いので蓚酸分解量より沈澱量が多く、蓚 酸過剰飼料は遊離Ca量が少なく分解量が多く沈澱量は少ない。その上利用できるCa 量が少ないために脱灰作用があると思われ、Ca添加の効果は認められるが少量で改 善されるようである。しかしこのCa添加はPとの適度の割合と量を考慮しないとか えって悪くなる。  反芻獣では蓚酸分解が行なわれるために吸収量が少なく中毒症はほとんど認められ ないが、吸収された場合は脱灰作用が考えられる。BeettopはPの少ない飼料で単用 では低P血症の原因になるので必ずPの補給を要するが、Caとの割合に注意せねば ならず、これを怠ると骨軟症の遠因になると思われる。Beettop多給時の下痢症は従 来蓚酸作用のみといわれてきたが、汚物(蓚酸塩を含む)の刺戟とsaponinの腸壁炎症 軽度の吸収saponinの中毒性などから発症するものと考えられる。  saponinはBeettop、alfalfa中に多く、これらを主体飼料としている地方に乳牛の 産褥性血色素尿症が多いことから、その発生原因となっていることが考えられ低P血 症との協同作用である。しかしその溶血度含量は諾外国のものより少ないので、給与 量の制限、ほかの飼料との組み合わせで充分予防できるものである。Beettop中の硝 酸態窒素の生理作用は今回は認められなかったが、これについてはさらに追試したい。 また、Beettop多給偏用によってketosisの徴候があらわれるけれども、これはほかの 飼料との組み合わせで予防できるものと思われる。  以上の生理作用はBeettopをsilageにすることによって相当軽減しうるがこのこ とについては別に報告する。以上のようにBeettop中の諸成分の生理作用について、お およそ推論してBeettop利用上の参考資料をえたが根本的な原因作用についてはさら に追求の予定である。


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