農業研究本部

イネヒメハモグリバエの卵期発育におよぼす湿度の影響

富岡 暢

北海道立農試集報.9,8-17 (1962)

 1955、1956両年にわたってイネヒメハモグリバエの卵の発育および孵化におよぼす 湿度の影響について2、3の実験を行なったが、特に低湿度が悪影響を与えることを 指摘した。 

1.55%R.H.以下の湿度では、卵は孵化することなく、75%R.H.でも孵化率 はかなり低い。卵内における幼虫体の形成は55%R.H.でも認められ、14℃ の場合には32%R.H.でもわずかに認められた。
2.胚子の発育可能な湿度範囲は孵化可能な湿度範囲よりもはるかに広いが、これら は温度によって変化し、最適温湿度は20~25℃、100%R.H.附近にある。
3.55%R.H.以下の低湿度は主として卵の初期発育を、75%R.H.は卵内幼虫 の孵化脱出を阻害する。
4.湿度を12時間ごとに交互に変動させた際、高湿度の方から先に接触させた場合 の方が低湿度から先に接触させた場合よりも、常に孵化率、卵内幼虫体完成率と もに高く、その差は両湿度の差が大きいほど著しい。
5.低湿度による卵の発育阻害は発育期間中のいかなる時期にもおこるが、その程度 は産卵直後が最も強く、以下発育の進行につれて弱くなる。
6.高湿度(100%R.H.)に24時間以上接触する機会があると、卵は胚子発育を 完了することができる状態になりうる。逆に低湿度(55%R.H.)に24時間接 触させると、温度が25℃以上の場合には孵化率を低下させるが、20℃では影響がみられなく、より長時間の接触が必要である。


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