農業研究本部

ビートトップサイレージ偏用事におけるサポニンおよび蓚酸の生理作用について

坪松 戒三、斉藤 久幸、谷口 隆一、岸 昊司

北海道立農試集報.9,18-36 (1962)

 ビートトップを一般農家が利用する場合、腐敗損失を危惧して短期の多給偏用の飼養法をとることが多い。これによって灰分代謝障害、低燐血、下痢症、ケトージスお よび産褥性血色素尿症の発生要因になるなどの生理作用がおこされる。これらの生理作用は主に蓚酸やサポニン直接または間接的な原因作用に基因することを以前に指摘した。これら修酸やサポニンは、サイレージ化によって、その含量が低下することか ら、ビートトップサィレージを乳牛に多給偏用した場合の生理作用の軽減の有無を検討するのが本試験の目的であって、乳牛に対するビートトップサイレージ飽食の生理的影響の試験と、綿羊による灰分代謝試験と消化試験を行ない、さらにサイレージ調製時の添加物の効果試験をも実施した。  その結果、ビートトップ給与時にみられた生理作用は、すべて顕著に軽減され、ビ ートトップサイレージの多用は考慮されてよいことが認められた。しかし元来ビートトップサイレージはP欠乏飼料であるために、P剤(濃厚飼料・骨粉)の適度な補給が大切で、これを欠くとPの代謝障害が観察された。また、ビートトップサイレージは 醗酵中の蓚酸分解によって遊離Ca量が多いので、Ca添加の必要性は認められなか った。  なお、サイレージにする場合Sodium metabisulfite添加法は醗酵を抑制し蓚酸分解量が少いので、ビートトップ添加剤としては不適であり、過石添加法は醗酵サイレージ法より蓚酸分解量は劣るが水溶性蓚酸の減少には最大の効果があった。  以上のことから、ビートトップサイレージを利用するには醗酵調製を行ない、量的制限よりもほかの飼料(濃厚飼料や乾草)との適度な組み合わせに注意が肝要であるこ とが認められた。


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