農業研究本部

In Vitro消化率による粗飼料の栄養価推定法に関する試験
第1報 In Vitroによるセルローズ消化率の測定法とこれによるチモシーと赤クローバーの刈り取り時期別消化率について

鳶野 保、谷口隆一、坪松戒三

北海道立農試集報.9,37-48 (1962)

 粗飼料の栄養価を推定する適切な方法についてその必要性をしばしば痛感するところであるが、近年In Vitroセルローズ消化率による栄養価推定法が発展してきたので、著者らもこの方法について試験することを目的とし下記の2試験を行なった。  試験A.In Vitroセルローズ消化率により栄養価の推定を行なう場合、その条件と方法を一定にして、実験室や研究者のいかんにかかわらず、一定の再現性のある価が得られねばならない。著者らは試験管を用い、第一胃内容物の搾汁液をMineral Solution で稀釈し、CO2を通し39℃の恒温水槽で繊維素醗酵を行ない、セルローズ消化率を 測定した。この場合におけるセルローズ消化率におよぼす要因を明らかにし、一定の 価が得られるべき方法について考察した結果、試料供試量は0.25~0.50g、セルロー ズ含量にして0.072~0.144gとし、胃液5c.c.、Mineral Solution20c.c.とし、供 試胃液の個体差を少なくすること、pHの調整は6.9を目標にして正確にすることな どに注意すべきであることが明らかとなった。  試験B.赤クロバーとチモシーを生育時期別に刈り取り、試験AのIn Vitro法を適 用してセルローズ消化率を測定した結果、草種間ならびに生育時期で著しい特徴ある価が示された。すなわち、両種とも成熟度が進むとともに消化率は減少するが、特に チモシーは著しかった。また、赤クロバーの若草時期の消化率は、チモシーよりかな り低い価であった。しかし醗酵初期(24時間まで)の消化率は赤クロバーの方が高か った。  以上の結果から、本法によるセルローズ消化率の測定値は栄養価推定上の重要な Indexになりうるものと思われる。  セルローズの消化率と、リグニン、粗繊維、粗蛋白、メトキシル含量との関係をみ た結果、同一草種内では相関関係があるが、草種が異なれぱ一定でない。  なお、チモシーと赤クロバーの繊維質を調査した結果、その含量や組成ならびに増 加の傾向には著しい差異が認められた。


全文(PDF)