農業研究本部

水稲品種における収量成分の経路分析年次および施肥量による変化

柴田 和博

北海道立農試集報.9,69-87 (1962)

1.施肥量(主として窒素)を変えた場合にどんな品種(遺伝子型)が多収となるかを知 るために、収量をその成分形質に分解して相対的重要度を求めた。
2.水稲品種の収量成分が、量的成分としての穂数、1穂粒数、稔実歩合、粒重と質 的成分としての登熟性、耐倒伏性、出穂性の計7形質からなり、それらが同時的 でかつ相加的に働くものと仮定した。そして第1図のようなcausal systemの下 に経路係数を求めた。試験は1959年から1961年までの3カ年にわたり、施肥量は 7段階、品種数は各年において20~30で行なった。施肥量については反復せ ず、各施肥量区内では品種について乱塊法2反復とした。
3.その結果、想定したcausal systemによって収量の大部分が説明され、経路係数 の相対的な大きさから次のように考えられた。
1)比較的少肥で空間的な制限がなく、肥料切れによる秋落ち傾向や倒伏もない場 合・・・・・穂数、1穂粒数ともに多いもの。
2)肥料切れによる秋落ち傾向がある点のみが前者と異なる場合・・・・・穂数、 1穂粒数ともに少なく、登熟日数長く、出穂の遅いもの。
3)ある程度以上の多肥で秋落ち傾向がなく、過繁茂による空間的な制限のある場 合・・・・・穂数、1穂粒数ともに少なく、耐倒伏性の強いもの。 以上のような品種がそれぞれの場合に多収となると考えられた。なお、実際 にはこれらの中の二者の中間状態もありうるであろう。稔実歩合、粒重などは 多くの場合に相対的に小さな値しか持たなかった。
4)得られた結果の育種上への応用についても若干の考察を行った。


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