農業研究本部

セルリーの腐敗病

 平成18年6月に洞爺湖町の6件のハウスで、セルリーの葉柄のみが濃褐色に腐敗して軟腐臭のしない腐敗が発生した。罹病部からは蛍光性Pseudomonas属菌が多数分離され、接種試験により原病徴が再現され、同一菌が再分離された。細菌学的性質を調べたところ、グラム陰性でグルコースを酸化的に分解し、蛍光色素を産生した。LOPAT試験ではレバンの産生、オキシダーゼ、ジャガイモ塊茎腐敗、アルギニンデヒドロゲナーゼ活性が陽性、タバコ過敏感反応は陰性であった。これはLelliottらのⅣaに該当し、Pseudomonas marginalisに相当する。また、グルコン酸の酸化やスクロースの利用は陽性で、硝酸塩還元、ゼラチンの液化、リパーゼ活性は菌株により異なったが、糖の利用性など他の性質も概ね既報のセルリー腐敗病菌および他作物の腐敗病菌であるPseudomonas marginalis pv. marginalisの性質と一致した。接種による本菌の他作物への病原性は確認していないが、本病をPseudomonas marginalis pv. marginalisによる腐敗病と同定した。本病の発生は道内では初確認である。
本病は育苗中には発生せず、定植直後から認められる場合もあるが、多くは栽培後半の株張期〜収穫期に葉および葉柄に発生する。葉では始め暗緑色水浸状の病斑を形成し、すぐに組織が崩壊して罹病部が濃褐色に腐敗していく。葉柄では始め水浸状の小斑点が形成され、後に褐色〜濃褐色で条状に伸展し、株元に及ぶと株全体が腐敗する。葉で発病したものが葉柄に伸展する場合も多い。また、株が張り葉柄が地面に接した場所などから発病する場合も見られる。軟腐病とは罹病部の色合い(軟腐病では淡褐色〜褐色のことが多い)や軟腐臭がしない点などで区別がつく。また、軟腐病では症状がすぐに株全体に及ぶが、腐敗病では時に葉や葉柄のみでとどまる場合も見られる。しかし、発生現場では両者はたいていの場合ハウス内に混発しており、必ずしも両者が明確に区別がつくわけではない。

 

(中央農試)

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