農業研究本部

10 小果樹類の特性と栽培技術

3 繁殖・植付け

(1) 繁殖

 赤ラズベリー(黄色品種を含む)は、結果母枝(前年に地際から発生した吸枝)の周辺から発生する吸枝を苗木に利用する。黒・紫ラズベリーは枝先が垂れ下がるので、早春に土をかけて発根させる(繁殖の方法としては、取り木法となる)。

(2) 植付け

 春植えと秋植えがあるが、北海道の場合は早春の土壌水分が多い時に行う。土壌に対する適応性は広いが、有機質に富んだ保水力のある砂壌土が適合する。
栽植距離は、株仕立てで2m四方にする。植え穴や植え方はすぐりに準ずる。

4 結実確保(結果習性)

 花芽は、腋花芽で前年の春に地下茎から発生した吸枝(当年は結果母枝)の葉腋から伸長した新梢の先端部に、花序を生じて結実する。結実した結果母枝は、果実の収穫後、自然に枯死する。
二季なりの品種は、結果母枝の各新梢のほかに、当年地下茎から発生した吸枝の先端に同じく花序を生じて結実する。
自家結実性で、単植でもよく結実する。

5 収穫

 収穫時期は、品種、気象、用途により差がでるが、品種独特の色、香り、甘味がでてから収穫する。
ラズベリーは、成熟期に達すると果実が柔らかくなり、花托から容易に果実が分離しやすくなる。シロップ漬けや輸送する場合には、成熟の1日前に収穫すると果形の崩れが少ない。札幌地方で早い品種は7月中旬から始まるが、1品種の収穫期間は約1か月あり、その間2~3日おきに成熟したものから収穫する。
収穫方法は手摘みによるが、降雨で果実がぬれている時は収穫を避ける。

6 土壌管理・施肥

 土壌管理は病害虫を軽減させるためにも、清耕法が望ましい。施肥後収穫までの間に3~4回中耕除草を行い、結果母枝の周辺から発生する吸枝は、翌年の結果母枝にするものや苗木として利用するもの以外は除去する。
施肥は、融雪直後に実施し、施肥量は表を基準に、地力や樹相により適宜加減する。


表26 きいちごの施肥標準

地帯区分


成株(5年生以上)



若株(3~4年生)



幼株(2年生以下)



目標収量





P2O5



K2O





P2O5



K2O





P2O5



K2O


道南・道央


850



10



10



10














道北・道東


750






















7 主な病害虫

 主要なものとしては、ナミハダニがある。札幌地方では6月中旬~7月に発生が多くなり、防除を怠ると下葉が灰褐色になって早期落葉を引き起こす。発生初期にナミハダニに効果のある殺ダニ剤を散布する。
また、収穫期に降雨が多いと灰色かび病が発生するが、一般に、過熟果で発生が多くなるので、り病果の摘除と適期収穫で対応する。

8 加工利用

 完熟した果実は、甘味、酸味、香気を伴って生食とすることができるが、大部分は加工に利用されている。
加工製品としては、ジャム、ゼリー、果汁飲料、シロップ漬け、リキュール、菓子類の副材料などである。成熟した果実の鮮明な紅色と独特な香りを生かした果実酒は、自家用としても好評である。

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