農業環境部(環境保全グループ)
(1)グループの概要
農地の保全と生態系との調和を図りまた食の安全・安心に向けて,土壌・水系などにおける養分や農薬などの物質の動態,農地の基盤整備に関する調査・研究および土壌資源情報の収集管理を行います。また,肥料検査や依頼分析を行っています。
(2)スタッフ一覧
研究主幹 | 細淵 幸雄 |
主査(環境保全) | 竹内 晴信 |
主査(生産基盤) | 八木 哲生 |
研究主任 | 藤井 はるか |
研究職員 | 小杉 重順 |
研究職員 | 漆畑 裕次郎 |
研究職員 | 河野 桜 |
(3)実施中の研究課題
- 2050年以降の気候変動データベース構築と農林業等への影響予測および適応策(2019~2023年度)
- 農業の生産性と持続性の向上を支援する簡便・低コストな画期的スマート土壌診断システムの基盤技術の開発(2023~2025年度)
- 次世代型土壌ICTによる土壌管理効果可視化API開発と適正施肥の実証(2023~2025年度)
- 気候変動適応策策定に向けたパイプライン化した用水の水温評価(2025~2026年度)
- 栽培管理履歴のデータ分析に基づく秋まき小麦栽培技術の地域的重要度評価(2025~2027年度)
- セルリーのファイトプラズマ病による被害を抑制する総合的対策技術の開発(2023~2025年度)
- 醸造用ぶどうの安定生産に向けた栽培管理技術の開発と樹相診断指標の作成(2023~2026年度)
- 北海道における高品質ワイン製造のためのデータベース構築事業(2025年度)
- 農業副産物を活用した高機能バイオ炭の製造・施用体系の確立 2.高機能バイオ炭等によるCO2固定効果の実証・評価等(2023~2027年度)
- 農地土壌炭素貯留等基礎調査事業(農地管理実態調査・定点調査)(2024~2026年度)
- 国内資源の肥料利用拡大に向けた調査委託事業(地力調査)(2024~2027年度)
- 土壌機能実態モニタリング調査
- 土地改良事業計画地区の土壌調査
- 肥料分析委託業務
- 有機質資材等の分析試験(依頼分析)
(4)最近の研究成果
北海道農業試験会議(成績会議)に提出された近年の研究成果を示しました。
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栽培管理履歴の有効活用に向けたデータ管理の現状整理と秋まき小麦の分析事例
(令和7(2025)年指導参考事項,概要書)
関係機関に蓄積した各種データを総合的に分析するためには、各データ内の用語統一と、各データを紐付けるための共通項目を明確にする必要があります。生産者単位の集計データを分析した結果、秋まき小麦の栽培管理履歴から収量への影響が大きい栽培管理項目を地域ごとに抽出可能であり、本データの有効性が示されました。
衛星リモートセンシングと地理情報を活用した畑地の排水不良域の推定法
衛星リモートセンシングで取得した土壌水分環境や作物生育の情報、既存の土壌群、地形区分等の地理情報を活用し、畑地における排水不良域を推定する手法を開発しました。本手法に基づき実施した排水改良対策の部分施工は、効率的な土層改良の手段として有効なことが確認されました。
北海道耕地土壌の理化学性と炭素貯留量の2023年度までの推移
道内耕地土壌では、心土がち密な地点、低 pH・ケイ酸不足の地点、交換性カリや有効態リン酸が基準値を超える地点が依然として多いものの推定減肥可能量は減少した。30cm 深土壌炭素貯留量は平均 111.2 t/ha で、泥炭土での減少傾向が伺われた。全道耕地面積 114 万 ha では 4.8 億 t-CO2と推定され、堆肥施用による炭素貯留効果は高いことがわかりました。
土壌物理性に起因したそば生産阻害要因と改良技術の実証
土壌物理性に起因するそばの生産阻害要因は、作土下の堅密土層と透水性不良でした。堅密土層に対して全層心土破砕、透水性不良に対して補助暗渠の施工により、土壌物理性が改善されそばの収量性が向上しました。
醸造用ぶどうにおける土壌の生育阻害要因と物理性改良法
(令和4(2022)年指導参考事項,概要書,パンフレット)
醸造用ぶどうの生育阻害要因は、作土が浅く作土下の堅密な土層などの不良な土壌環境にありました。全層心土破砕で定植前や樹列間の堅密層を破砕することで生育収量が改善し、効果は2年経過時でも認められました。樹園地でも疎水材暗渠等の活用により余剰水を効果的に排水できます。これらの対策は生産者自ら実施できるものです。
土層改良と後作緑肥を用いた部分不耕起による土壌流亡対策技術
堅密層が浅い位置に出現する傾斜畑では、多雨時や融雪期の表面流去水により土壌流亡が発生 しやすく、営農での土層改良により地下浸透を増やすことで土壌流亡量は2~3割削減されました。また、後作緑肥の一部を秋にすき込まず、春まで不耕起にすることで土壌流亡量は約2割削減され、土層改良との併用で3~5割削減されました。
たまねぎに対する集中管理孔を活用した地下灌漑技術
(平成31(2019)年指導参考事項,概要書,パンフレット)
たまねぎに対する地下灌漑は,深さ20cmまでとし,活着後から球肥大期の期間で10mm以上の連続降雨が1週間以上なく,かつ1週間以内にまとまった降雨が見込まれない時に行います。地下灌漑の実施による肥料溶脱は認められず,地下灌漑中の機械防除も可能であり,規格内収量が増加しました。
畑での補助暗渠による疎水材暗渠の機能回復効果と持続性
(平成30(2018)年指導参考事項,概要書,パンフレット)
有材補助暗渠は疎水材により本暗渠までの安定した排出ルートを形成でき長期間の持続性を有しています。パンブレーカは深い土層までの堅密化を改善でき5年程度の持続性を有しています。いずれの工法も効果の持続的な発現には施工後の営農管理による心土破砕や堆肥施用,緑肥栽培などによる継続的な土壌物理性改善が必要です。
硫酸酸性土壌に起因した低pH転換畑に対する酸性矯正法
(平成30(2018)年指導参考事項,概要書)
酸性硫酸塩土壌による低pH転換畑への炭カルによる酸性矯正は,炭カル添加・通気法による矯正量(目標 pH6.0)の1.5倍程度を上限に作土へ施用し,客土を行う場合は矯正量を客土前の作土に施用します。土壌診断により不足養分を補給して矯正後も土壌診断で対応します。矯正量の算出には炭カル量簡易算出法も適用することができます。
転換畑における事前の整地を伴う不耕起播種による秋まき小麦栽培
(平成30(2018)年指導参考事項,概要書,パンフレット)
転換畑で土壌条件が良い時期に耕起・整地を行うことで播種時の耕耘を行わず秋まき小麦を不耕起播種する栽培法は,通常栽培法との間に生育収量差はありませんでした。降水量が多く,水稲収穫期でもある秋まき小麦の播種時に耕耘しないことで,作業競合や無理な耕耘による土壌物理性の悪化が低減できます。
安全安心なかぼちゃの生産に向けた土壌残留ヘプタクロル類の作付け前診断手法
(平成29(2017)年指導参考事項,概要書,パンフレット,ガイドライン)
ヘプタクロルの残留基準値(0.03ppm)を超過したかぼちゃ果実の生産を回避するため,土壌に残留しているヘプタクロルについて,かぼちゃ作付け前に土壌診断を行い,作付け可否を判断する手法を示しました。 なお,令和元年7月23日以降,かぼちゃ果実の残留基準値は0.03ppmから0.2ppmへと変更されました(厚生労働省 平成31年1月22日付 生食発0122第2号)。
多様な地域・用途に対応した飼料用とうもろこし安定栽培マップの作成
(平成29(2017)年指導参考事項,概要書,パンフレット)
(畜試,根釧農試,上川農試,北見農試と分担)
道内におけるとうもろこしの安定的増産をめざし,用途別の安定栽培マップを開発しました。
省力的水田輪作体系に向けた子実用とうもろこしの省力栽培技術の実証
(平成28(2016)年指導参考事項,概要書,パンフレット)
家畜飼料に用いる子実用とうもろこしを水田輪作体系の中で省力的に生産するための技術として,泥炭土における窒素施肥法と土壌改善の効果を検討しました。
他試験場,他グループを含む研究成果については,こちらからもご覧いただけます。