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上川農業試験場

場長室より(風景とひとこと)

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2026.3.10 真冬の稲栽培

3月4日に、温室で栽培する稲の刈り取りを行いました。品種開発に必要な年数を短縮するための世代促進栽培です。

 

北海道では、まだまだ根雪の残るこの時期の稲の刈り取りは非常に珍しいことでもあり、テレビや新聞各社からも地域の話題として取材および報道をいただいています。

コメの新品種開発へ 北海道・上川農業試験場で「冬の稲刈り」 | NEWSjp(TVhテレビ北海道)

高温や病害に強いコメを 上川農業試験場、温室の60種収穫|北海道新聞

※ほかにNHKニュース道北オホーツク版(3/4)、日本農業新聞北海道版(3/12)に掲載いただきました。

 

これら取材をしていただいたのは稲刈り作業を行った日ですが、収穫するということは、その前に種を播いて苗を育てて稲穂をみのらせているということでもあります。

せっかくなので、報道の「舞台裏」をご紹介するような気分で、冬の稲栽培の写真を以下に載せてみます。

 

 

今回、温室で収穫した稲は、前年7月に交配したものでした。

交配作業
2025年7月下旬、蒸し暑い温室での交配作業

 

交配種子を栽培中
交配した株は温室で栽培し、9月始め頃に実った種を採取します

 

 

10月上旬に、この交配種子を播いたのが、冬栽培のスタートです。

播種準備
10月6日 播種の準備作業。少量ずつの貴重な交配種子を扱うため、育苗箱に細かく試験区番号を割り振っているところです。

 

育苗
10月24日 苗を育ててる様子。「水苗代」の状態として、水やりの手間を省いています。

 

 

温室内の「田んぼ」は、コンクリートの枠に土を1mほど詰めたものです。土をあら起こしし、水を入れて、肥料を散布し、代かきをします。これらの作業工程は、規模は小さいですが、屋外の田んぼと同じです。
 

施肥
10月30日 水を入れて、肥料まき

 

代かき
10月30日 代かき

 

田植え直後
11月4日 田植え(作業直後)

 

 

田植えの後は、朝夕の温度と電照を自動で調整しながら、栽培を行いました。

電照
11月4日 田植え直後の温室。朝夕に電照を行って、夏と似た日長条件にします。

 

設営中
11月21日 新しい葉が伸びています。植え付けの時に目印とした網には、その後の倒伏防止の役割もあります。

 

年末の稲
12月22日 株が大きくなりました

 

12月に入ると、外気温が最高でも氷点下である、真冬日が続くようになります。

寒さに弱い稲は、穂が出るひと月前からの気温がとても重要で、夜であっても冷害の生じる20℃未満に下げないこと、穂が出るころにはさらに高い温度となるよう、担当者が段階的に調整を行っています。

 

年末の稲
1月5日(仕事始) 出穂が始まりました

 

年末の稲
1月5日 外には氷柱(つらら)が見えます

 

年末の稲
この時期の最低気温は-20℃を下回ります

 

年明けから、最も冷え込みが厳しい大寒(2026年は1/20)の頃にかけて、温室の稲は出穂して花を咲かせます。

 

出穂開花
1月21日 出穂・開花も終盤に

 

出穂開花
1月21日 稲の花

 

開花を迎える時期の温室内の温度は28℃前後に保っています。メガネが曇ってたいへんです。

 

開花終
2月6日 穂が垂れてきました。籾の中の粒が生長してきた証です。

 

収穫間近
2月24日 籾が膨らみ、しっかり色づいてきました。収穫間近です。


 

そして、3月4日に刈り取りを行いました。

刈り取り開始
3月4日 さあ、刈り取りです

 

撮影中
3月4日 取材は、作業の支障にならないようにとお気遣いただきました

 

作業を行う職員のチームワーク、手際の良さに、記者の方が感心していらっしゃいました。そうなんです、うちのスタッフすごいんです!

 

刈り取り
3月4日 試験区ごとに種が混ざらないよう、慎重かつ手際よく刈り進めます

 

このなかに、数年後の立派な品種が入っているかもしれないと思うと、ワクワクします。

取材を終えてからも、当然ですが、作業は続きます。

刈り取りを終えた温室
3月4日 刈り取り直後の温室、このころまでには取材は終了

 

持ち運び
3月4日 試験区毎に束ねて持ち出し

 

はさがけ
3月4日 温室からすぐの廊下ではさがけ

 

温室につながる廊下で乾燥させます。4~5日でしっかり乾きます。

 

乾燥したあとの作業の様子がこちら。

はさおろし
3月9日 乾燥したら「はさがけ」から降ろします

 

運搬
3月9日 台車で別棟に運んで

 

脱穀
3月9日 脱穀

 

今回採った種は、まもなく道南農試に送られ、2026年のうちにさらに年2回の世代促進栽培が行われます。交配実施当年から数えると、上川と道南あわせて2年で4回栽培することになります。

 

 

一昨年(2024年)に交配した種は、その年の冬温室、および道南での2世代の世代促進を経て、先日、当場に戻ってきました。

帰ってきた世促種子
2024年夏に交配した種子が、道南農試での世代促進栽培を経て、F4世代になって帰ってきました

夏だけの栽培であればこの春にF2世代の播種となるはずですが、上記世代促進栽培を行うことで、F4世代として当場の田んぼで栽培し、品種化に向けた絞り込み(選抜)に入ることができます。交配から10年程度を要する品種改良が8年程度と、2年分短縮することになります。

 

交配から品種開発まで時間のかかる取り組みを1年でも早めることは、取り巻く環境変化が大きい農業の振興のために必要です。さらに長い視点では、交配から有望系統が選抜され、その有望系統を次の時代の交配親に用いる、という育種のサイクルを重ねるほど、世代促進の効果は大きなものになるといえます。

実際に、いちどの交配では十分に改良できない場合でも、上記の育種サイクル(交配~有望系統の選抜~有望系統を親としてさらに交配)を繰り返すことで、望ましい特性が徐々に積み上げられていく事例が少なくありません(一度の交配で都合よく良い特性だけが集積することはほとんどありません)。この育種のサイクルを縮めることが重要で、例えば、品種化に至る手前のF7世代頃から交配母本として使う場合、世代促進栽培は、交配から次の交配までのサイクルを7年から5年に短縮します。7年の場合、最初の交配から14~15年で2サイクルですが、世代促進を行った5年なら3サイクルとなります。育種のサイクルを重ねるほど、世代促進が効いてくると言えるのではないかと考えています。

なお世代促進は、夏の栽培とは条件が異なることには留意が必要で、世代促進の間に冬栽培に適したものばかりが増えている、といったことがないよう常に検証する必要があることも申し添えておきます。

 

 

取材を受けたのは一日だけですが、その裏側や役割についても少し補足しておきたいと思い、この項を記してみました。

最後におまけとして、もう一枚つけておきます。

 

インタビュー
インタビューを受ける様子

 

報道各社ご担当様、丁寧な取材をいただき、ありがとうございました。

そして、取材への対応を行った職員のみなさま、お疲れさまでした。 いい顔してたよ!

 

 

 

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インスタグラムにも写真を掲載しています

 

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