場長室より(風景とひとこと)
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2025.6.25 冷やしかけながし、はじめました
「冷水田(れいすいでん)」という特殊な田んぼに、地下からくみ上げた冷たい水をかけ流しています。

寒さに強い稲を選ぶ試験です。
流し込む「冷水」は19℃を目安としています。「プール水の温度は原則22℃以上」(厚生労働省健康局長通知)、「遊泳に適する水温は26~31℃」(公財・プールアメニティ協会HPより)のようですから、ひとが泳ぐには適さない温度といえます。サウナのあとに入る水風呂(16~20℃が多いようです)並みです。
暑い日にはひんやりして心地よいですが、ずっと浸かっている稲はかなりの”冷え”を感じていると思います。

この水田は、できるだけ水温が均一になるよう、広い場所から同時に水が入れられる仕組みとなっています。 また、試験区にはいくつも温度計を設置してモニタリングしています。

この時期の稲は、幼穂(のちに穂となって実る部分)が茎の中の株元近くに出来てきており、この部分を含めて冷やすことで「冷害」(うまくお米が実らない=不稔)を再現することが出来ます。この冷水処理を行っても、良く実る(不稔が少ない)品種は、耐冷性が強いと判断できます。
冷害の克服は北海道の水稲にとって長年の課題でした。冷水田を用いて選ばれた品種が、これまでの生産安定に大きく貢献しています。
最近は高温に注目した情報が多いですが、「気候変動」はゆるやかに温暖化するわけではなく、変動がこれまで以上に大きくなると予想されています。このため、冷害がなくなった、とはまだまだ言い切れないのが現状だと思います。
当面は、寒さにも暑さにも負けない、そういう品種を目指しています。
週間予報では暑い日が続きそうです。
私自身、思わず冷水田に飛び込みたくなる気持ちを抑えながら、水分と休養をしっかり取るよう心がけたいと思います。


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