場長室より(風景とひとこと)
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2025.12.10 冬はつとめて
清少納言の『枕草子』を読んだのは、中学校の国語の教科書だったと思います。春はあけぼの、夏は夜、秋は夕暮れ、冬はつとめて。季節ごとの風情を記した、いまの言葉で言うエッセイのようなものと理解しています。
このうち「冬はつとめて」だけは、はじめて読んだときからしっくりきませんでした。もちろん、清少納言が書いた場所は京都でしょうから、私の育った道北とは寒さの質がずいぶん違います。なお、私の四季感覚は、春はまだ寒い、夏は暑い、秋はもう寒い、冬はとても寒いになってしまうので、感性の違いの方が大きいかもしれません。
ところで最近、冬の「つとめて」の美しさを、少し理解できてきたような気がします。
冬至が近いこの時期は日の出が遅いので、出勤時間が「つとめて」に概ね相当するだろうと思います。冷え込んだ朝、出勤するといろんな場所に霜が付着しているのが観察できます。その霜に注目するとなんとも造形が繊細なこと、弱い陽差しのなかできらめく様子、陽が高く昇るとすぐに消えてゆくところにもはかない趣を感じます。


さて、屋外作業がなくなるので、「農業試験場って冬は暇なんでしょう」と言われることがあります。
安心してください、ちゃんと「冬も勤(つと)めて」います。
冬の方が忙しい職員も少なくありません。各種実験だけでなく、試験研究の大事な節目として1月に成績会議、3月に設計会議、ふたつの北海道農業試験会議という、すべての研究員にとって大切な会議があります。
特に、成績会議は、道が新品種や新技術を認定し普及に移すことを決定する重要な節目です。道総研農業試験場は北海道農業のための技術開発を主題としており、実施する開発研究は基本的にこの成績会議への提案が出口(目標)となります。この点は、同じ研究機関でも、学術研究(学術論文)を目的とする大学等とはかなり性格を異にしているところだと思います。
そして、成績会議に提案する課題担当者にとっては、冬は努(つと)めて慌ただしい季節でもあります。
複数年の試験データを整理するだけではなく、得られた知見を技術として構築し、実際に生産者に使ってもらえる技術情報として提案します。関係者と打合せを重ねてよりよい成果に磨き上げる過程など、たいへんなところも少なくありませんが、その技術の必要な方・実際に使ってもらう方を想定できることもあり、学会発表や学術論文とは違った、責任とやりがいがあります。
成績会議を経て、新しく普及に移すことが認められた「品種」や「技術」は、すみやかに全道の普及関係者に伝達されます。また、2月下旬には「新技術発表会」を開催し、試験担当から直接説明を行う場を設けています。具体的な日程が確定しましたら、改めてご紹介いたします。(フライング情報ですが、全道版は札幌で2/20頃、地域版として上川農試では2/25の実施を想定しています)
※これまでに新品種・新技術として認定された研究成果や過去の新技術発表会に関する情報は、道総研農業研究本部のサイト(農業技術情報広場)にてご案内しております。ご興味がございましたら各リンク先もご参照ください。
冬の「つとめて」は、「勤めて」も「努めて」も、あてはまりそうです。
あまり上手なダジャレでないことは自覚しています、冬の寒さが増してしまったらごめんなさい。

今夜は雪の予報です。
冬はつとめて。除雪が必要だから早起きしなければ、という新解釈をしてみようかな。

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