場長室過去記事:20250508
2025.5.8 「こうじょはじめ」
「こうじょはじめ」という言葉を、農業試験場に就職して初めて知りました。数十年前の話で恐縮です。 先輩方の話から察するに農業試験場の仕事に関することのようでしたが、はて、税金の話はしていない、公的な序列も関係なさそう、まして宮内庁に関係するはずもない、音から連想したどの文字をあててもしっくりしません。 あとから関係書類を見たところ、「耕鋤始」とありました。
土を「耕」すために「鋤(すき)」を入れた「始」めの日、という意味です。季節の早晩を表す用語で、雪の長い地域独特の言葉と思われます。
長い冬が去り、雪が解け、土が乾きだして、初めて畑を耕し始めた日。
桜の開花とはひと味違った春の言葉だと感じます。
上川農試の、今年の「耕鋤始」は、4月22日でした。

当場で、春いちばんに耕す場所は、春まき小麦の試験圃場です。

4月に入って低温や降雨の日が多かったため、雪が消えても、畑はなかなか乾きませんでした。このため、細かく砕かれずゴロゴロとした土の塊が多い状態となりました。豆類なら出芽に影響しそうな状態ですが、小麦はこれでなんとかなります。翌日からしばらく雨予報なので、遅れるよりもこのタイミングで作業した方が良いとの判断でした。

春まき小麦は、雪解け後の4月、遅くとも5月初旬頃までに種をまきます。この種まきの時期は、早いほど生育が良好となり、逆に遅れるほど収穫量が落ち込むという特徴があります。このため、春まき小麦の試験担当者は、いつになったら畑を耕せるのか、種がまけるのか、毎年気もそぞろにこの時期を過ごしています。

作業は好天に恵まれました。その後、無事、出芽を迎えています。

担当研究者はじめ、みなさん、おつかれさまでした。
とはいえ、春まき小麦を皮切りに、ぞくぞくと圃場作業が立て込んできます。水稲の苗もハウスの中で移植の日を待っています。落ち着けるのはまだずいぶん先かと思います。
どうかみなさん、体調管理に気をつけて、ご安全に作業を進めてください。
(最後に場長らしいこと言った)
