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上川農業試験場

場長室過去記事:20250924刈りあとの緑

2025.9.24 刈りあとの緑

稲を刈り取ったあとの株から、葉や茎が再生しています。

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刈り取ったばかりの水田(8月29日)


 

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再生茎が伸びた水田(9月17日)


稲の刈り株からの再生は、収穫後の気温が高い本州などではよく見かける姿です。北海道でも、生育が早い年にこのような姿が見られるようになりました。こんなところにも、最近の気温の高さを実感します。

 

いちばん早く刈り取った水田では、なんと出穂している株が、ちらほら見つけられます。

 

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再生した茎から出穂するものまで

 

この試験区の刈り取りは8月27日でした。もしかしたら2回刈り取れるのでは?とちょっと色気が出ましたが、再生した穂はかなり小さく、また、結実に必要な温度とこれから冬にかけてグングン寒くなることを考えると、さすがに難しいと、頭の中で直ちに自己完結しました。なお本州などの暖かい地域では、そのまま再生させて二度目の収穫を行うことが、技術的には可能なようです。

 


同じイネ科でも、小麦ではこのような「再生」は観察されません(※早く倒伏してしまった場合などでは、まれに新たな茎が発生する場合があります)。

 

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小麦の刈りあと

 

小麦は成熟期を迎えたあと、急速に茎の水分が抜けます。そのまま放っておくと雨の度に茎が折れたり倒れたり、倒れなくても穂発芽が生じます。植物体が代謝を終え、次世代の「種」にきっちり移り変わっている「一年生(annual)」の特徴をよく表していると思います。
なお、植物用語で「一年生」とは、種から発芽して、開花し、次の種を生産するまでのサイクルを1年の生育期内に完了し、その後枯れる植物です。

 

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小麦は収穫時期になるとすっかり緑色がぬけています

 

小麦は、収穫が遅れると品質がガタ落ちになるので、成熟したあとはできるだけ速やかに収穫を行います。しばしば小麦の担当者がせっかちだと耳にするのは、作物の特性が影響しているのかもしれません、そのあたりはどうかご容赦ください。

 

 

稲は、収穫穫時期でも茎の水分は高くまだ緑色が残った状態であることが多いです。小麦で経験していた感覚のまま、バインダーで刈ったばかりの稲束を持ってみたところ、ずっしりと重く感じて、驚きました(はさがけで自然乾燥させたあとはすっかり軽くなります)。
「多年生(perenial)」の性質が残る稲は、小麦と比較すると、再生するための余力を茎や根に残しているように想像します。

 

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稲の収穫は小麦と比べるとずいぶん青く見えます

 

「一年生」の麦類と、「多年生」の性質が残る稲。同じイネ科でありながら、その生態はずいぶん違うものです。 稲と小麦の違いについては、機会があればもうちょっといろいろ考えてみたいです。

 

 

さて、試験水田の収穫は最終盤を迎えています。収穫を終えたら順次脱穀作業に移ります。

そういえば、先日、大雪山に初雪が降ったそうです。朝晩、すっかり寒くなってきました。

脱穀作業の準備として、作業室にジェットヒーターが運びこまれていました。
 

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脱穀作業を行う10月は、平均気温が10℃を下回ります

 

ついこの間まで暑い暑いと言っていたような気がしますが、冬はやっぱり来るのですね。わが家のストーブも確認しなくては。

 

 

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