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上川農業試験場

場長室過去記事:20251009調査脱穀

2025.10.9 調査脱穀

試験水田の収穫が終わり、作業の主体は屋内に移ってきました。

先週後半から、稲の「調査脱穀(ちょうさだっこく)」がはじまっています。

 

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たくさんの試験区の調査を流れ作業でおこなっています

 

調査脱穀は、稲から籾(もみ)、籾から玄米に調整する作業を行いながら、同時併行して収量に関する各種データを記録する一連の作業です。農業試験場では毎年行われている作業ですが、なかなか紹介される機会はないと思います。

そこで自らの立場を利用し、作業の妨げにならないよう気をつけながら作業室に潜入(?)してきましたので、その様子をレポートします。

 

収穫後の稲は、試験区ごとにまとめて、ビニールハウスで自然乾燥させてありました。籾の水分が15%程度から下回っていることを確認し、雨に当たらないよう事前に屋内へ運び込んでおきます。

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自然乾燥した稲束は、雨にあたらない日を選んで運び込みます

 

調査脱穀は、以下の流れで行います。
①稲束全体の重さを量る
②脱穀(だっこく)
③風選(ふうせん)
④籾の重さを量る
⑤籾すり(もみすり)
⑥玄米の重さ(粗玄米重)を量る
⑦篩選(ふるいせん)
⑧調整された玄米の重さ(整玄米重)を量る
⑨玄米の水分を量る
⑩サンプルを保存袋に保管する
試験点数が多いこともあり、これだけの作業段階をいちどに流れ作業で行っています。このうち、①④⑥⑧⑨は試験データとして具体的な数値を得る部分で、その他は試験データを取るための作業です。

さて、これらを写真で見ていきましょう。

 

①稲束全体の重さを量る

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試験区ごとに重量を記録します。試験番号を記載したメモ用紙を添付して次の作業に移ります。

 

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脱穀作業が行いやすいよう、試験区ごとにまとめてテーブルに並べます。

 


②脱穀(だっこく、稲束から籾を取り分ける)

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赤白の機械(脱穀機)の中では、爪のついたドラムが高速で回転しています。回転部分に稲の穂を差し入れることで、穂から籾を分離させることができます。籾を取り終えたワラは堆肥場へ運びます。

 

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脱穀された籾は下部の赤い引き出しに集まります。試験区ごとに籾を取り出して次の工程担当者に渡します。試験用脱穀機は、ゴミがたまりにくく、中の掃除がしやすい構造をしています。

 


③風選(ふうせん、脱穀した籾からゴミを取り除く)

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脱穀したばかりの籾は茎や葉の一部などゴミ(夾雑物:きょうざつぶつ)が混ざった状態です。風の力でゴミを飛ばして、籾だけの状態に選別します。この機械は、唐箕(とうみ)といいます。

 

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唐箕は、上から投入した籾が下から出てくる間に、壁の向こうに向けて風を送り、籾より比重の軽いものを吹き飛ばします。きれいになった籾は次の担当に渡されます。

 

 

④籾の重さを量る

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籾の重さを計測します。試験番号を確認しながらの作業です。

 

 

⑤籾すり(もみすり、籾殻を取り除いて玄米にする)

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籾すり機です。機械の中で、籾を強い力でこすって、籾殻(もみがら)を取り外し、玄米に調整します。

 

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籾殻を取り除いた“粗”玄米です

 


⑥玄米の重さ(粗玄米重)を量る

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籾すりを終えたばかりの玄米の重さを計測します。④と同じスタッフです。「計測」を2回行うこのポジションは全体を見渡せる場所でもあり、試験を中心的に担当する研究員が立ちます。

 

 

⑦篩選(ふるいせん、粒の小さいくず米を取り除いて出荷規格に調整する)

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中に筒状の網目が入った選別機にかけます。粒の小さい「くず米」を取り除き、生産者が出荷する場合と同じ状態に調整します。

 

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くず米を取り除いた“整”玄米です。

 


⑧調整された玄米の重さ(整玄米重)を量る

 

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選別後の玄米の重量を計測します。写真は、量り終えて次の作業者にサンプルを受け渡すところです(計測の瞬間を撮り損ねました)。

 

 

⑨玄米の水分を量る

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玄米の水分を計測します。この測定器は、粗くすりつぶした玄米をセットし、レバーを倒すことで水分を表示します。

 


⑩サンプルを保存袋に移し替えて保管する

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試験の内容によって小袋などに取り分けて保管します。特に試験番号に間違いがないよう細心の注意を払います。

 

 

これら一連の作業が、冒頭の写真のように、作業室の中で同時に行われています。

 

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別の作業日。試験担当が入れ替わりながら、調査脱穀はいましばらく続きます。

 

研究員にとっては、春から行ってきたほ場試験でいちばん重要なデータが得られる作業です。流れ作業の中でせわしなく、またホコリっぽい空間での作業ですが、苦労だけではなく楽しみな時間でもあります。

 

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休憩中のひとコマ。上司の噂話でも? 談笑のネタになるなら本望です。

 

 

夏の間の試験水田では、きっちりと栽培が管理されているのをながめておりました。

試験処理の効果はもちろん、今年の気象を反映した、良いデータがとれているに違いないと期待しています。

 

 

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