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酪農試験場

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根釧農試 研究通信 第11号 2002年3月

チモシー主体粗飼料のビタミン濃度
~ビタミンEとβ-カロテンについて~


 

1.背景・ねらい

 ビタミンEとAは、乳牛の健康維持、乳房炎や繁殖障害の減少、免疫機能の改善、乳量の増加などを目的をする栄養補助資料として注目され、その給与推奨値も増加傾向にあります。これらは、放牧草や青刈粗飼料などに強いビタミンE活性を持つα-トコフェノールとして、あるいは、ビタミンAの前駆物質であるβ-カロテンとして多量に含まれ、良質粗飼料がこれらの乳牛への供給源とされています。しかし、これらの含有量は粗飼料の種類や調整条件で異なりばらつきも大きいとされており、簡易な測定法もありません。
 
 そこで、粗飼料品質の向上と飼料給与設計の基礎資料とするため、根室・釧路・宗谷地区の酪農場におけるチモシー主体粗飼料中の濃度実態調査と粗飼料原料草の乾物中濃度の推定方法の検討を行いました。 


2.技術内容と効果

チモシー主体の粗飼料中の濃度実態
 酪農場から採取したチモシー主体粗飼料の乾物中ビタミンEとβ-カロテン濃度には高い創刊があり、β-カロテンが高濃度に含まれている飼料はビタミンE濃度も高い傾向がみられました。 

 乾物中濃度は、生草では放牧草>2番草生草>1番草生草の順で、草部割合の多い粗飼料ほど高い傾向にありました。また、貯蔵粗飼料では高・中水分サイレージ(乾物率34%以下)>低水分サイレージ(乾物率35%以上)>乾草の順で、予乾日数の長い低水分粗飼料ほど低い傾向にありました。

 とくに、乾草や極端な低水分サイレージ中のビタミン濃度は低く、これらを主体に乳牛に飼養する場合は注意が必要です。(表1) 粗飼料中の濃度が低いと推察される場合は、ビタミン剤等による補給が必要となります。 

原料草の乾物中濃度の予測
 チモシー粗飼料の乾物中濃度は、番草と育成日数及び水分調整時間に影響を受けます。これらの要因からサイレージ原料草の乾物中濃度の予測値を算出し等高線図に示しました。(図1,2,3) 
 
 等高線図から読み取った値は、サイレージ詰込原料草の乾物中濃度の予測値となります。また、香水分以外の密封状態で保存されたサイレージではサイレージ乾物中濃度の予測値としても利用できます。なお、この予測値は根室地区のデータに基づいています。1番草は生育期の進行による変化量が大きいので、他の地域では生育期による補正が必要です。

 飼料給与設計では貯蔵粗飼料中のビタミンEやβ-カロテン濃度についての情報が少ないため、貯蔵粗飼料中の含量を考慮せずに高価な飼料添加剤に依存した設計を行うのが一般的になっています。しかし、等高線図を利用して、粗飼料中の濃度を高めるとともにその値を推測・勘案することで、飼料添加剤のコストを低減することが可能です。

 牧草を適期に刈り取り、極端な低水分サイレージを避けるなど、粗飼料中のこれらのビタミン濃度を低下させない粗飼料調整条件を守るとともに、粗飼料の調整条件から乾物中濃度を予測し飼料給与設計に利用することを勧めます。 


(省略した図) 
 表1 チモシー主体粗飼料の乾物中ビタミンE及びβ-カロテン濃度の実態
 図1 育成日数と乾物中濃度
 図2 水分調整中の乾物中濃度の残存率の変化
 図3 刈り取り時期と水分調整時間による調整原料草の乾物中濃度の目安値 
 

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