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酪農試験場

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根釧農試 研究通信 第11号 2002年3月

生乳中のビタミンB2およびB12濃度の変動要因


 

1.背景・ねらい

 人の牛乳・乳製品の摂取量と栄養所要量からみると、牛乳はビタミンB2(リボフラビン)とビタミンB12(コバラミン)の重要な供給源になっています。これらのビタミンは、成牛ではルーメン内で大量に合成されていて、牛乳中の濃度も比較的安定した値を取るといわれています。

 しかし、乳中ビタミンB12濃度が飼料中のコバルト(微量要素)濃度と関連があることが知られている他は、牛乳中濃度の変動要因や飼養条件との関係については明らかではありません。

 そこで、農場バルク乳および個体乳中のビタミンB2およびB12濃度とその変動要因、さらには飼養条件との関係について釧路館内32農場での調査と場内試験を行い検討しました。


2.技術内容と効果

 農場バルク乳のビタミンB2濃度の平均(範囲)は1.47(1.14~1.76)μg/mlで国内での一般的な牛乳の値1.5μg/mlと同様の値でした。農場別にみると、乳牛の平均乳量や濃厚飼料給与量が多くなるほど、乳中のビタミンB2濃度が低くなる傾向がみられました。

 濃厚飼料給与量が多くなるほど1頭当たりのビタミンB2生産量が多くなっているので、生産されたがビタミンB12が乳量で希釈されるため乳中濃度が低くなると考えられました。(図1、省略)

 農場バルク乳中のビタミンB12濃度の平均(範囲)は3.4(0.8~4.9)ng/ml、1.5ng/ml以下の3農場を除くと国内での一般的な牛乳の値3ng/mlと同様の値でした。農場間の乳中のビタミンB12濃度には大きな差異がみられましたが、そのごく一部は濃厚飼料給与量で説明できましたが、大部分の要因は明らかになりませんでした。(図2、省略)

 個体乳中のビタミンB2およびビタミンB12濃度は、初乳で著しく高く、泌乳初期に最低値となったのち乳期の進行に伴って高くなる傾向が見られました。 また、個体別のビタミンB2濃度の平均値(範囲)は1.3(0.9~1.8)μg/ml、ビタミンB12濃度の平均値(範囲)は4.9(2.4~7.1)μg/mlと個体間に大きな差異がみられました。(図3、図4省略)

 牧草サイレージの刈り取り時期の違いによる粗飼料品質の変化は、乳中のビタミンB2およびビタミンB12濃度に影響は与えませんでした。しかし、適期刈の牧草サイレージを使用して、全飼料中の粗飼料割合を65%から40%に低下させると産乳量が増加するとともに、乳中のビタミンB2濃度は有意に低下し、現地調査で得られた結果と一致しました。(表1、表2省略)


3.留意点

 農場バルク乳の調査はコバルト欠乏土壌の分布する北海道釧路東部地区で行いましたが、飼料中のコバルト濃度や乳牛のコバルト摂取量との関連については調査していません。 


(省略した図)
 図1 牛群の産乳成績と農場バルク乳のビタミンB2濃度の関係
 図2 牛群の産乳成績と農場バルク乳のビタミンB12濃度の関係
 図3 泌乳期別のビタミンB2濃度の推移
 図4 泌乳期別のビタミンB12濃度の推移
 表1 牧草サイレージの刈取時期と乳中ビタミンB2およびビタミンB12の関係
 表2 粗飼料濃厚飼料比と乳中ビタミンB2およびビタミンB12の関係

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