水産研究本部

試験研究は今 No.5「ヒラメ人工種苗放流からの判明点と人工、天然の肉質の違い」(1989年9月29日)

試験研究は今 No.5「ヒラメ人工種苗放流からの判明点と人工、天然の肉質の違い」(1989年9月29日)

Q&Aは平成元年度水産試験研究プラザの質問からです。

Q&A ヒラメの人工種苗放流からどのようなことがわかっていますか。また、人工種苗放流魚と天然魚に肉質等に違いはあるのでしょうか。

ヒラメの人工種苗放流
  北海道では、昭和57年から日本海側を中心にヒラメの人工種苗放流を行っており、最近では10センチメートル種苗で年間15〜20万尾を放流しています。また、種苗放流したヒラメが水揚げに占める割合は年々増加しており、なかには40センチメートルを超えるものもあり、自然界で立派に成長できることが証明されています。

  水産試験場では、放流されたヒラメがうまく自然になじんでいるかどうかをみたり、どの程度生き残っているかなどの追跡調査を行っています。今年は、どんな餌を食べているかを確かめたり、どのくらいの速度で放流地点から散らばっているのかを調べています。

  その結果、放流した翌日には、放流地点からあまり移動せず、すぐ環境になれて天然の餌を食べていることがわかりました。餌は主にアミと呼ばれる小さな甲殻類で、河口域の水深4メートル付近にこのアミが多いこともわかりました。

  また、魚の味などの違いについてですが、養殖魚は天然魚に比べ、通常、脂肪が多く、肉質が柔らかい傾向にあると言われ、その原因は過密養殖による運動不足や配合餌料による肥満等のためと考えられています。

  それでは、放流したヒラメと天然ものでは、その肉質が違うのでしょうか。


  魚の味や臭いは、一般に餌にした魚の成分に強く影響され、また、肉のかたさなどの食感については運動量などが影響すると言われています。

  放流したヒラメは天然ヒラメと同じ餌を食べていますから、魚肉の成分組成はほぼ同じとみられます。また、天然ヒラメに混じって漁獲されているところから、その行動や移動も天然魚と同じように考えられますので肉質の違いはないものと思われます。
(中央水試)

トピックス

「移動加工相談室」の開催のお知らせ

  9月30日、午後1時から寿都町漁民センターで寿都地区の移動加工相談室を開催します。「塩かずのこ製造上の留意点」「いずしの製造工程の解析と合理化」の2題の講演を予定していますので気軽にご参加ください。
(中央水試)

「シロマス順調に育つ」~今後の経過に期待

シロマス
  水産孵化場では、長野県からヨーロッパ原産のシロマス発眼卵を移入し、培養した餌を与えて飼育しています。現在、大きさは8.2センチメートル、重さは6.8グラムに達し、順調に成長しています。

  シロマスは北欧などにすむ寒冷地に適応した淡水魚で、孵化直後の飼育が難しい魚ですが、ある程度成長すると、ほとんどニジマスと変わらない方法で養殖できますので、当場では北海道の環境に合った増養殖技術の開発をめざして飼育試験を行っています。
(水産孵化場)

「道南太平洋海域でスケトウダラの漁期前調査を実施」

  9月8~9日、函館水試室蘭支場は、渡島胆振スケトウダラ刺網漁業協議会の協力を得て、10月から始まるスケトウダラ漁業の事前調査を行い、海況予報の説明会を渡島胆振地区の漁業者、加工業者を対象に実施しました。詳細については、後日、漁況予報パンフレットを作り、関係者にお知らせすることにしていますが、他に必要な方はご連絡願います。
(函館水試)

「平成元年度カレイ類資源調査終わる」

  網走水試では、7~8月の2回、雄武海域でマガレイ、スナガレイの幼・稚魚期の分布生態調査を実施しました。今年の調査では両種とも当歳魚(今年生まれた魚)の採集尾数が多く、60年以降で最も多くなりそうです。この年級群が来年どの程度出現するかが注目されています。

  しかし、マガレイについては1歳魚が前年よりも少なく、来年度の資源動向が心配されるところです。なお、詳しい結果については、現在取りまとめ中ですので、わかりしだいお知らせします。
(網走水試)

「網走湖の無酸素層の状態について」

   過去2年にわたり、網走湖でカワガレイ、ウグイなどが死に、地元漁業者が不安にさせた無酸素層の湧昇は強い風が吹いても起こらない状態になっています。これは湖面から5メートル前後にあった無酸素層が本年は常に6~7メートルの深さにあるためです。また、この無酸素層の水は、硫化水素の臭い(卵の腐った臭い)がし、その色も乳白色、あるいは黒色を呈しています。
(網走水試)