水産研究本部

試験研究は今 No.7「噴火湾の稚ケガニ試験放流の内容とメガローバの取り方について」(1989年10月13日)

試験研究は今 No.7「噴火湾の稚ケガニ試験放流の内容とメガローバの取り方について」(1989年10月13日)

Q&Aは平成元年度水産試験研究プラザの質問からです。

Q&A 噴火湾で稚ケガニの試験放流をしていると聞きましたが、その内容やメガロッパの採り方を教えてください。

ケガニの成長過程
  ケガニは北海道の「海の味覚」の代表的なものです。煮ての姿売りが一般的ですが、天ぶらや刺身にしても美味で、観光客にも好評を博ています。

  このケガニも以前に比べるとずいぶんと少なくなりました。その原因としては、取リ方の問題もありますが、ケガニの子供時代までに、水温が高すぎて死んだり、魚に食べられたりすることも大きいとされています。ケガニをもっとたくさん取れるようにするためには、もっと大量の稚ガニを放流したり、取り方を適正にコントロールする必要があります。

  現在、栽培漁業総合センターなどでは噴火湾海域でケガニの試験放流を行っています。放流する種苗は、日本栽培漁業協会の厚岸、宮古の両事業所で卵から育てたメガロッパ(浮遊しながら生活しているケガニの幼生)や、噴火湾で5月下旬から6月下旬に採取した天然のメガロッパを海中に垂らした篭に入れて育てます。この育成に使う篭の形や構造、篭に入れるメガロッパの数、シェルターの工夫改良によって生残率も大幅に向上しています。放流は稚ガニの甲長が13~16ミリメートル位となる、その年の8月に行われ、昭和63年には8万尾ほどを放流しました。
メガロッバの搾取風景
  メガロッバからこうした放流サイズの5齢期(5回脱皮したもの。甲長約15ミリメートル)位までに育てる技術は、ここ数年で確立できると考えています。しかし、人工種苗生産技術や天然採取技術、放流技術、放流効果を確認する技術の確立についてはもう少し時間がかかるかも知れません。

  次に天然メガロッパの採取方法ですが、水温が5~10度の5月下旬から6月下旬頃に、口径(ロ前)150センチメートルの稚魚ネットを曳き、海中に浮遊しているメガロッパを採っています。このメガロッパが分布している水深や場所についての判断材料はまだ整っていませんが、水温や潮目の影響を受けて分布していることがわかっています。

  このほか、同じ時期にケガニとよく似たクリガニのメガロッパも浮遊していて、それがネットに混じって入ってきます。これをそのまま篭で育成しますと、肝心のケガニの生き残りが悪くなります。このケガニとクリガニのメガロッパを見分ける方法なども解決していかなけれはならない課題であると思っています。
(栽培漁業総合センター)

トピックス

日本海スルメイカ漁海況(10月~12月期)概報について

  10月1日、中央水試、函館水試、稚内水試から10月~12月期の漁海況の予報が発表されました。

1:沖合水域
  • 沖合水域で漁獲対象となる「秋生まれ群」の来遊水準は昭和62年、63年を上回り、かなり高い水準にあると推定されます。
  • 10月~12月の主漁場は62、63年に比べ西寄りの朝鮮海湾東方沖、大和堆北西方~ウツリョウ島周辺、大和堆~隠岐諸島北東沖などの水域に形成されるでしょう。
  • 10月~12月の沖合水域での漁船1隻1操業日当たりの漁獲量は、52年以降で最も好漁だった55年にはおよびませんが、62年を上回るでしょう。しかし、漁獲努力量の大幅減少が予想されることから漁獲量は62年並みにとどまるでしょう。

2:北海道西部沿岸水域
  • 漁獲対象となるスルメイカは「冬生まれ群」が大部分となるでしょう。その中には夏以降、この水域に滞泳している群、北緯46度以北水域から南下してくる群、太平洋から津軽海峡をへて日本海へ移動してくる群が含まれるでしょう。
  • 北海道西部水域での滞泳群及び北緯46度以北への来遊群は62年よりも多いと推定されます。また、太平洋北部水域における来遊量も62年よりもやや多いと推定されます。
  • 以上のことから10月~12月の北海道西部沿岸水域における「冬生まれ群」の来遊量は62年をやや上回ると予想されます。したがって、この時期の漁況も62年をやや上回る状態で推移するでしょう。
(中央水試、函館水試、稚内水試)