水産研究本部

試験研究は今 No.11「アワビの漂流効果について」(1989年11月17日)

試験研究は今 No.11「アワビの漂流効果について」(1989年11月17日)

Q&Aは平成元年度水産試験研究プラザの質問からです。

Q&A アワビの放流効果について教えて下さい。

受精卵
  種苗放流の効果は、一般的に放流までのコストよりも水揚げ高が多い場合、あるいは放流前に比べて前浜の資源が増えた場合に、その成果があったと判断されます。

  先ず、種苗放流コストより水揚げ高を多くするための考え方についてですが、それには人工種苗の単価を安くし販売単価を高くしたり、放流したものをより多く採る必要があります。

  アワビの場合、人工種苗をつくる方法は10年以上にわたって改善の努力がされてきましたが、北海道は本州に比べて水温が低いため、どうしてもコストが高くなります。また、アワビの販売単価は他の魚貝類に比べてはるかに高いのですが、東北各県に比べると成長が遅いため、放流後の同じ年令で見ると本州の方が単価が高くなります。ちなみに成長ぶりを比較すると、北海道では放流して3年目で75~80ミリメートルになりますが、岩手県では同じ年令で95ミリメートル前後、重さでは1.5倍になります。

  こうしたことから、現在の北海道の種苗価格や販売価格から考えると、放流した種苗のうち20~25パーセント以上を漁獲しないと、放流した効果があったことにな.りません。この放流した種苗がどれくらい漁獲されたかの調査は全国的にも少なく残念ながら20パーセントを越える例は多くありません。しかし、最近では、道南で40パーセント以上、秋田県でも30パーセント以上の漁獲が記録されています。

  こうした放流種苗の漁獲率を高めるためには放流種苗の生残率を引き上げることが何より基本となりますが、このため水試では、放流技術の改良試験を行っています。大成町地先海面では放流初期における人工種苗の減耗率の把握と放流後の保護施設の設備改良、また、知内町地先海面ではカニ類の食害が予想以上に多いことから食害の影響とその防除方法の調査です。そのうち、大成町における人工種苗の馴致効果確認調査からは中間報告の段階ですが、約1ヶ月間、馴致施設に入れたアワビ種苗の施設内での減耗がほとんどなく、その後の生残率調査でも馴致した方が馴致しないものより発見率が高いことが分かり馴致効果が充分あることなどが判明しています。

   次に種苗放流によって前浜の資源が増えたかどうかについてですが、漁場での天然種苗と人工種苗の割合をみると、水産技術普及指導所の中間報告(右表)では、人工種苗の割合が非常に高くなっています。

  これは前浜の天然アワビ資源が少なくなったためと言えま.すが、前浜の資源を支えているのは今や人工種苗であるとも言うことができるかと思います。
表
  しかし、こうした種苗放流だけで前浜の資源を回復させることは到底難しく、さらに資源を増やすためには、こうした種苗放流とともに、稚貝の育成場の造成や餌料海藻の増殖、害敵除去、密漁防止、制限殻長の厳守など、種苗放流後の漁場管理を厳しく守っていく必要があります。
(函館水試)

トピックス

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貝毒モニタリング調査結果まとまる

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