試験研究は今 No.15「養殖ホタテに含まれるグリコーゲン量は餌と関係有るか」(1989年12月22日)
Q&A 養殖ホタテに含まれるグリコーゲン量は餌と関係があるのでしょうか。

その結果、グリコーゲン(無水物換算値)は貝柱のなかに特に多く含まれていること、季節によっては全重量に占める割合も1.68~29.27%と大きく変化することなどがわかりました。これとプランクトン量の変化とを合わせて見ると、プランクトンの量が少ない8月の高水温時と冬季1~3月の低水温時にはグリコーゲン量が少なくなっており、プランクトン量とグリコーゲン量の季節的な変化がほぼ一致します。また、生殖巣では、グリコーゲン量は生殖巣が大きくなるに従って逆に減る傾向を示しました。
それでは、このグリコ一ゲンはどのような役割を果たしているのでしょうか。人間では胃や腸で吸収された栄養は肝臓にグリコーゲンとして貯蔵され、人間が活動するためのエネルギー源として使用されます。ホタテガイは胃にある杵晶体の消化酵素による細胞外消化と、中腸腺(ウロ)等における細胞内消化によって餌の栄養分を消化吸収します。吸収された栄養分はグリコーゲンと脂質の形で蓄えられ、グリコーゲンは主に貝柱や小柱の閉殻筋に、脂質は中腸腺(ウロ)にエネルギー源として貯蔵されます。
この閉殻筋のグリコーゲンは、貝を開けたり閉じたりするエネルギー源としてだけではなく貝全体の栄養源貯蔵庫としても重要な役割を果たしています。ホタテガイは不適当な餌や糞を粘液に包んで体外に排出する機能を有します。
このため、栄養価値の低い泥などが主体である漁場では、不適切な餌が多く、閉殻筋に蓄積されたグリコーゲンなどの栄養分が粘液を作るため多量に消費されることにより、貝の成長は悪くなります。また、噴火湾において養殖ホタテガイが大量に死んだ際、化膿した貝柱からビブリオ菌や白糖分解ビブリオ菌等の細菌が検出されましたが、このような貝柱には、正常貝や他の異常貝に比べてグリコーゲン量が少なかったようです。このようにホタテガイに含まれるグリコーゲン量は、養殖漁場における餌の質や量だけでなく、生理的活性に影響のある水温や流速などの外部環境要因、生殖巣の発達や養殖貝の健康状態(特に貝柱への細菌の感染など)密接に関連しているのです。
(釧路水試)
トピックス
様似町水産加工業者への加工技術指導
10月12日、13日の2日間、様似町の6軒の水産加工場を回り、筋子の品質改善を目的とした技術指導を行いました。これは、8月に開催された「日高地域ミニ試験研究プラザ」の際に、筋子の発色と身じまりを良くする方法について、もっと実情にあった細かな指導をしてもらいたいとの加工業者からの要望に応えたものです。筋子の製造方法は、各加工業者とも基本的な点は同じですが、細かな点で異なっていますので、それぞれの特色に合わせて技術指導を行いました。今後とも皆さんから寄せられた問題点を一つずつ解決していきたいと考えています。
(函館水試)
水産孵化場ロビー展の開催

(水産部)