水産研究本部

試験研究は今 No.20「ケガニは成長が遅いと聞くが、漁獲サイズまでに何年かかるか」(1990年2月16日)

試験研究は今 No.20「ケガニは成長が遅いと聞くが、漁獲サイズまでに何年かかるか」(1990年2月16日)

Q&Aは平成元年度水産試験研究プラザの質問からです。

Q&A ケガニは成長が遅いと聞きましたが、漁獲サイズまでに何年かかりますか。

  今回は、ケガニの成長や生活のいくつかの質問について少し詳しく説明しましょう。

  ケガニは、本州沿岸に多いガザミ(ワタリガニ)に比べると成長が遅く、漁獲サイズの甲長8センチメートル以上になるのに満5年から6年以上かかります。
    • ケガニの脱皮成長過程

1年に何回脱皮するのでしょうか?

  魚や貝は毎日少しずつ大きくなって成長していきますが、カニやエビは堅い殻を脱ぎ捨てて段階的に大きくなります。これを脱皮成長と言いますが、ケガニの脱皮する回数は、最初の年が一番多く、年を追うごとに段々少なくなります。

  ケガニは4月に卵からふ化します。ふ化した子供は1ミリメートル以下の小さいものですが、海中を泳ぎ回りながら6回の脱皮成長をくり返し、7月上旬までには5ミリメートル前後の子ガニになって海底に定着し、.脱皮成長していきます。噴火湾のホタテ養殖かごなどで見られる子ガニはこの時期のものです。栽培センターでの飼育結果では、最初4.5ミリメートルの子ガニが1年目は8回脱皮して36ミリメートルに、2年目は2回脱皮して56ミリメートルに、その後は年1回脱皮して3年目に69ミリメートル、4年目に82メートルになっています。ですから漁獲できる甲長80ミリメートル以上のカニになるには13回以上の脱皮と、満4年以上の年数がかかることになります。

  天然のものは、この室内で飼育したものに比べて成長がやや遅く、満4年で73ミリメートル、満5年以降は2年に一度の脱皮で漁獲サイズになるには満5年から6年以上かかります。

ゾエア、メガロッパとは?

  カニ類のふ化直後の幼生は特殊な形をしていてゾエア幼生と呼ばれます。4月にふ化したケガニの幼生は6月までに5回の脱皮成長を繰り返すとゾエア幼生とは形の違うメガロッパ幼生になります。このメガロッパ幼生が1回脱皮して稚ガニとなります。 

交尾と産卵は同時に?

抱き合う雄雌のケガニ
  タラバガニは交尾と産卵を同時に行いますが、ケガニは交尾後8~10ヶ月後に産卵します。釧路や十勝海域では8月から2月に、雌雄抱き合ったままのカニがよく見られます。8月から11月のものは産卵経験のある年とったカニが、12月から2月のものは初めて産卵する若いカニが抱かれているのが見られますが、室内飼育でもこのことが確かめられています。

  生後2年11ヶ月目に当たる1月に脱皮した雌は、直ちに交尾して、体内にあ.る貯精嚢に雄からの精子を貯えます。そして、10~11ヶ月後の11月から12月に産卵し、腹に卵を抱きます。幼生のふ化は、それからさらに約1年4ヶ月後の4月に行われ、その1~5ヶ月後に脱皮成長して2回目の交尾を行います。この1回目の交尾から2回目の交尾までの2年と2~6ヶ月は脱皮しません。このようにケガニは一般の魚や貝に比べて子孫を残す為に長い時間を必要とします。雌ガニを大切にしなければならない大きな理由がここにもあるわけです。