水産研究本部

試験研究は今 No.23「オホーツク海沿岸のまひ性貝毒プランクトンはどこからやってくるのか」(1990年3月9日)

試験研究は今 No.23「オホーツク海沿岸のまひ性貝毒プランクトンについて」(1990年3月9日)

Q&Aは平成元年度水産試験研究プラザの質問からです。

Q&A オホーツク海沿岸のまひ性貝毒プランクトンはどこからやってくるのでしょうか。

  まひ性貝毒の原因プランクトン、プロトゴニオラックス・タマレンシス(植物プランクトンの一種)は噴火湾の他にも、太平洋沿岸や根室海峡に広く分布しており、毎年のようにホタテガイが強く毒化されます。

オホーツク海沿岸では年によって貝が毒化されますが、ホタテガイ漁場に出現する貝毒の原因となるプロトゴニオラックス・タマレンシスは、どこからやってくるのでしょうか。
このプランクトンは日本海側に分布していませんし、また、海流の流れの方向からみて根室海峡から流れてくる考えられませんので、オホーツク海の沖合に分布しているとの仮説が立てられました。。
このことを確かめるために、平成元年7月、水試調査船北洋丸でオホーツク海沖合における、プロトゴニオラックス・タマレンシスの分布を調査しました(図1)。その結果、このプランクトンは、この時期、沿岸から10~20マイル沖合までを占めている宗谷暖流水の中にはほとんど出現せず、ほとんど出現せず、さらにその沖合、特に北西側に高い密度で出現しているのがわかりました。
このことから昭和60年と61年の7月、網走管内でプロトゴニオラックス・タマレンシスが短期間、突然、出現したのは、このプランクトンを含む沖合の水塊が沿岸の暖流水と混合して接岸したためであると説明できます。また、宗谷暖流の勢力が増大し水温が急上昇した8月上旬に、このプランクトンがホタテガイ漁場から消滅したこともこの説を裏付けています。
また、オホーツク海沖合の表面水は夏でもプロトゴニオラックス・タマレンシスが増殖するのに適温です。したがって、そこで増殖している、このプランクトンが本道沿岸に接岸して、ホタテガイを毒化させるか否かは宗谷暖流の勢力如何にかかわっているといえますが、このことを予報することは残念ながらまだ極めて困難です。
以上、説明したように、オホーツク海の沖合にはプロトゴニオラックスという名の機雷が漂っているということになります。この機雷は、もちろん船舶の航行には外はありませんが、ホタテガイ漁業にとっては誠に厄介な代物です。このプロトゴニオラックス・タマレンシスシンによって7月頃に貝が急に毒化(まひ性貝毒)することもありますので、常にそれに対する腹積もりが必要でしょう。

    • goniolax
    • tamalence
(網走水試)

  【トピックス】
「第2回後志地区水産 試験研究プラザ」開かれる。
後志地区の水産試験研究プラザが2月28日(北後志地区)、3月1日(南後志地区)の両日それぞれの会場、古平文化会館、神恵内村漁村センターで開かれ、各地区とも160名余りの水産関係者が参加し、昨年を上回る熱気あふれるプラザとなりました。
プラザは全体会議の後、資源海洋分科会と増養殖分科会とに分かれ、水試から「後志のスケトウダラ資源の現況」、「磯焼け現象とその対策について」と題して本年度の石狩湾におけるスケトウダラの不漁についてや特に日本海側で問題となっている磯焼け現象についてを中心に話題提供がなされ、活発な討議が行われました。
(中央水試)