水産研究本部

試験研究は今 No.24「イワシ煮汁に含まれる利用可能資質とその回収方法について」(1990年3月16日)

試験研究は今 No.24「イワシ煮汁に含まれる利用可能資質とその回収方法について」(1990年3月16日)

Q&Aは平成元年度水産試験研究プラザの質問からです。

Q&A イワシ煮汁に含まれる利用可能物質とその回収方法について教えて下さい。

イワシ煮汁内の利用可能物質回収方法
  道東では毎年100万トン前後のマイワシが漁獲されますが、その95パーセント以上がフィッシュミールの原料となっています。煮汁は、このミール製造工程で大量に産出しますが、ミール業界ではこの処理が大きな問題となっています。この煮汁はイワシのエキスそのもので、これまでの成分分析から、種々のアミノ酸やイノシン酸といった利用可能な物質が多く含まれています。

  これらの物質は味と密接な関係があり、例えば、昆布の味の主成分はグルタミン酸ナトリウムというアミノ酸であり、鰹節のうま味の成分はイノシン酸であることが知られています。水試では、これまで未利用だったイワシの煮汁からアミノ酸やイノシン酸などの有用物質を分離し天然調味料を製造する方法について研究していますので、今回は、その内容について説明します。

  まず、煮汁のたんぱく質をたんぱく分解酵素を使ってアミノ酸などのエキス成分に分解します。次に、分解した液を非常に小さな穴のあいた膜(限外濾過膜)を通してエキス成分だけを分離します。このとき、酵素分解と膜分離を組み合わせた装置(メンブレンリアクター装置、図)を使うことによって、より効率的にエキス成分を分離することができます。この分離したエキス成分をさらに濃縮したり乾燥することによって、液体や粉末状の天然調味料ができます。この天然調味料の生産コストは、液体調味料(うち固形物50パーセント)で1キログラム当たり約200円です。また、この煮汁にはアミノ酸の一種であるタウリンが約0.3パーセント含まれています。このタウリンはイカ、タコ、貝類、魚肉などに多く含まれ、血液中のコレステロールを低下させる作用や心筋梗塞、動脈硬化など成人病の予防に効果があるとされております。
イワシの煮汁から有用成分を分解中の職員
  現在、タウリンの効率的な回収方法の検討を進めていますが、概略は次のとおりです。まず、限外濾過膜によって、煮汁からたんぽく質など高分子物質を除去した後、イオン交換樹脂を用いてタウリンを分離します。この段階ではまだナトリウムなどを含んでいますので、これらを電気透析により除いた後、アルコールを使って結晶化させ、タウリンを回収することになります。このような有用物の製造方法の確立によって、今まで未利用だったイワシの煮汁は今後その利用価値を高めるものと思います。
(釧路水試)

トピックス

平成2年度桧山地域水産試験研究プラザ開催のご案内

第2回後志地区水産試験研究プラザ写真
  平成2年3月27日(火曜日)午後1時30分から瀬棚町町民センターに.おいて平成2年度桧山地域水産試験研究プラザを開催します。当日は、水試が現在取り組んでいる課題やウニ、アワビ、コンブといった主要漁獲対象種の資源状況などについて説明があるほか、色々な質問について広く全体討議を行う予定ですので、皆様お誘い合わせのうえふるってご参加ください。
(函館水試)