水産研究本部

試験研究は今 No.33「 ホタテガイ外套膜を原料とする加工品について」(1990年6月8日)

試験研究は今 No.33「 ホタテガイ外套膜を原料とする加工品について」(1990年6月8日)

Q&A? ホタテ貝外套膜を原料とする加工品について教えてください。

ホタテ貝解剖図
  ホタテ貝の外套膜(俗にミミ、ヒモという)は、軟体部の外周に位置し、貝殻をつくるうえで重要な役割を持っていますが、加工原料としての価値は低いものとされています。

  全国のホタテ貝生産量は昭和63年度で32万トン(北海道では25万3千トン)に達しますが、ホタテ貝外套膜の歩留まりは時期と貝年令によって7.5~10パーセントと変化するので、仮に歩留まりを8パーセントとすると、全国のホタテ貝外套膜の生産量は2万5千6百トンになります。

  しかし、生貝やボイル製品など外套膜が付いたものや廃棄されているものもありますので、これらを考慮しますと、3~4割程度が加工原料として利用可能な数量と思われます。

  このホタテ外套膜は、昭和40年代後半まではホタテ貝の生産量が少ないこともあり乾ミミとして販売され、佃煮用、あるいは家庭の漬物用材料として利用されていましたが、昭和50年代に至って生産量の増大にともない、ホタテ外套膜も大量に産出されるようになりました。
表1
 この外套膜は生外套膜と煮熟外套膜に分けられ、それぞれ主に、ホタテ玉冷製造と煮干貝柱製造から生じます(成分は表1)。

ミミの調味乾品

表2
  原料は冷凍生外套膜を用います。解凍後、砂や黒膜、エラなどを除去するため十分に水洗いし、水切り後に調味します。調味配合の一例を表2に示しましたが、まず、スダレの上に調味した外套膜をヒモ状、または、広げて7~8割程度乾燥させた後、スダレからはがして裏面を乾燥させます。

  また外套膜の端を重ね合わせ続けて乾燥させますと、乾ノリ状のものができます。乾燥時間は晴天の天日乾燥で約半日です。干し上がり製品はゼラチン様の透明感がある棒状のもので、スルメの足に似た歯ざわりがあります。

のしミミ

表3
  原料は煮干貝柱を作る時の一番煮後の外套膜や水にもどした乾燥外套膜を用います。まず、外套膜に付着している黒膜を塩もみをし、除去します。次に、流水で塩ぬきをし、水切り後、表3に示した調味を行い、冷所で1夜乾燥させます。乾燥の目安は重量が約半分となった時点(約35度で4~5時間、水分約26パーセント)とし、ミミを重ね合わせながら、2,3度伸展機を通し、つなぎ合わせます。これをさらに4~5時間乾燥させた後(水分16~18パーセント)、加熱しながら薄く伸ばして製品とします。

塩辛

  原料は生外套膜と乾燥外套膜を用いる方法があり、乾燥外套膜は水温5度の止水に24時間ひたしてから用います。いずれも黒膜を除去したものを長さ約3センチメートルに切断し漬け込みますが、イカ肝臓を使用した調味配合例を表4に、酵素製剤を使用した調味配合例を表5に示しました。生外套膜と乾燥外套膜とでは、乾燥外套膜の方が特有の生臭みが少なく、また、イカ肝臓と酵素製剤とでは、イカ肝臓の方が熟成は早くなりますが、イカ肝臓臭がします。

  以上、最近の加工技術から数点について、紹介しました。ホタテ貝外套膜を用いる加工品種は少なく、その利用の拡大が望まれていますが、最近ではシーフード・サラダ向けとした商品も市販されているようです。
(網走水試)
    • 表4,表5