水産研究本部

試験研究は今 No.43「マナマコの人工種苗生産の方法について」(1990年9月14日)

試験研究は今 No.43「マナマコの人工種苗生産の方法について」(1990年9月14日)

Q&A? マナマコの人工種苗生産の方法について教えてください。

  マナマコの人工種苗生産技術の開発研究については、昭和50年代半ばから多くの県で取り組んでいますが、いずれもまだ技術開発の途上にあります。

  本道では近年のナマコの需要拡大による資源の枯渇を危倶して、平成元年度から栽培漁業総合センターと稚内水試が宗谷漁協と共同して、この研究に取り組んでいます。
    • ナマナコの発生模方図
マナマコの人工種苗の生産過程は、
  1. 親ナマコの確保と採卵
  2. 浮遊幼生の飼育
  3. 着底した稚ナマコの飼育
  4. 稚ナマコの中間育成
  5. 放流
の5つの段階に分けられますが、ここではある程度の知見が得られた最初の3段階についてお話ししたいと思います。
1. 親ナマコの確保と採卵
  確保する親ナマコは通常の産卵時期である7、8月の2~3か月前に採捕し、自然海水の掛け流しで飼育しています。産卵時期が近づいたら、100~500リットルの水槽に移し、自然海水より約5℃高い海水に親ナマコを入れて産卵を誘発します。産卵を始めた個体は18リットルの水槽と移してつづけて産卵させ、精子を含んだ海水を加えて受精させます。
受精した卵は48時間程でアウリクラリア幼生となり海水中を浮遊します。
2. 浮遊幼生の飼育
  幼生の飼育は0.5トンの黒い塩化ビニール製の円形水槽で行っています。飼育に使う海水の交換は1日に約300リットルの海水を続けて注水して行い、あふれ出る海水はプランクトンネットで濾過してから排水しています。
 
  飼育水温は20度前後に保:ち、表面をエアーストーンで強く通気します。こうした方法は、ウニの幼生の飼育方法と基本的に同じです。飼育に用いる餌は、市販の濃縮クロレラや浮遊珪藻の一種であるキートセラス、グラシリスなどを与えます。

  こうして育ったアウリクラリア幼生は10日間ほどすると、体が縮んでドリオラリア幼生となり、さらに2~3日間でペンタクチュラ幼生となって数日後には稚ナマコとなります。
3. 着底した稚ナマコの飼育
  稚ナマコの飼育はウニやアワビと同じく波板を使ったり、幼生を飼育した水槽にそのまま着底させたり、プランクトンネットのイケスにいれたりして育成しています。

  着底直後の稚ナマコの大きさは体長0.3~0.4ミリメートル程度で白い色をしていますが、2か月ほどすると体長は5ミリメートル程度になり、赤っぽく色がつき始めます。餌は幼生期に与えていたキートセラス、グラシリスが今のところ最も良いのですが、安定した餌料の供給を考えて比較的簡単に与えることのできる人工餌料などについても開発を進めています。

  また、着底してからの稚ナマコの飼育方法については、まだ、はっきりとした成果が得られておらず、今後の課題として取り組んでいる最中です。

  中間育成については各県とも海中で行う方式を開発中ですが、海へ移すときのサイズもどこもまちまちです。共同研究での放流サイズは現在のところ体長30ミリメートルとしていますが、その効果についてのデータが少ないのが現状です。まだまだ多くの課題がありますが、マナマコの人工種苗生産技術の開発に向けて、一つずつ課題の解決に取り組んでいるところです。
(栽培漁業総合センター)

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