水産研究本部

試験研究は今 No.46「サケ・マス類のウイルス病について」(1990年10月5日)

試験研究は今 No.46「サケ・マス類のウイルス病について」(1990年10月5日)

Q&A? サケ・マス類のウィルス病について教えて下さい。

  北海道のサケマス類に発生する病気には水カビ病や原虫によるトリコジナ症、細菌性腎臓病(BKD)などがありますが、特に被害が大きく防疫上やっかいなものとしてウィルス病があります。ウィルス病の主な病気としては、伝染性造血器壊死症(IHN)と伝染性すい臓壊死症(IPN)があります。
 
  その外面的な症状としては、IHNは魚の動きが不活発になり、体側の筋肉にV字状の内出血をしたりしますが、IPNは旋回して泳いだり腹部が突出するなどの症状が出ます。また、開腹して内臓を調べると、IHNは腎臓やひ臓の造血組織の貧血.が見られ、IPNではすい臓の出血が見られ、このことが病名の由来となっています。

  このウィルス病は元来、日本に存在しなかったものと考えられており、北アメリカからのサケ科魚類の発眼卵の輸入によって.伝播されたものと推定されていますが、ウィルスが確認されるまでは稚魚がかかる「不明病」として手の施しようがありませんでした。

  ウィルスが伝播した原因の一つとして、魚類輸入に当たっての検疫の法体制が整備されていないことが上げられますが、ウィルス病には、細菌による病気のように抗生物質等の特効薬がなく、このことがウィルス病を防げない大きな理由となっています。

  現在、ウィルスがすでに日本に居ついてしまった以上、この対策としてはウィルスの伝播を防ぐための防疫や予防にその主眼が移っています。

  IPNはかって本州のニジマス発眼卵の輸入が原因となって、本道南西部で発生した事例が3件ありましたが、幸いなことに稚魚の焼却処分によって単年度で終息させることができました。このことはウィルス汚染地域から魚や卵を持ち込まないことがいかに重要であるかを示していますが、ここで問題なのはIHNです。

  IHNは稚魚にだけ発生する伝染病でしたが、ここ2~3年前から幼魚や成魚にも発生するようになっており、稚魚だけではなく大きな魚にも感染し発病を広げるような変異をおこしつつあります。

  しかし、魚がウィルスを持っているかどうかを区別するにはウィルスに感染した魚が発病したり死んだりしないと分かりませんし、また、ウィルスを持っている魚からウィルスを検出しようにもその値が検出限界以下であることが多く非常に難しい現状にあります。したがって、ウィルスで汚染された地域の魚などを焼却処分し、汚染が広がらないようにするのが現在のところ最善の策ですが、高級魚志向にともない活魚輸送が盛んな今日、輸送や移動とともに汚染地域を広げている形跡すらあります。

  このため、水産孵化場では、IHNの予防に研究の主眼を置き、次の研究を行なっています。
  • ウィルスの汚染状況の把握
  • 魚の体内でのウィルスに対する防御機構(免疫機構)の解明…ウィルスに感染させた細胞や生体の血液から生体防御に関する基礎的知見の収集
  • ウィルスの弱点に対する研究…ウィルス.が感染する仕組みに特別なしかけがあるかを調べ、その弱点の調査研究
  IHNウィルスの汚染状況調査については、十数年来行ってきており、大規模な経営体についての状況は把握していますが、防疫指導にも関わらず、汚染は拡大傾向にあります。

  また、予防法については電気的特性を利用した方法でウィルスの感染を防ぐことが実験レベルでは可能となりましたが、魚体への応用の目処が立っておらず、現在、ウィルスの感染性が魚の大小や魚種等により違いがあることが分かってきたので、これを利用してウィルスに対する免疫性を高める方法について目下研究中です。
(水産孵化場)

トピックス

韓国放送公社(KBS)、取材のため中央水試を来場

  9月21日、韓国のKBS放送の一行が本道の沿岸増養殖に関する試験研究の取材のため、中央水試を訪れました。
 
  一行は通訳を兼ねた大韓民国札幌領事館のバン副領事と韓国放送公社のチョン記者、キムカメラマンの3名で、韓国の沿岸でも深刻になっている磁焼け対策に特に関心を示したほか、ヒラメの放流事業についても興味を持った様子でした。

  この様子は韓国のニュース番組や特別番組で放映される予定です。
(中央水試)

新鋭調査船「おやしお丸」の一般公開

  先月、余市港において竣工式を終えた中央水試調査船「おやしお丸」は、調査のため積丹から雄冬岬の間の海域に赴き、この途上、9月26日に留萌港に立ち寄り一般公開をしました。入港早々、多数の方々の出迎えを受け、3時間という短い公開時間でしたが196名もの方々が船内を見学されました。

  この後も海洋観測などを続け、10月8日には道南江差港でも一般公開する予定になっています。