水産研究本部

試験研究は今 No.50「ワカサギの生態と資源動向について」(1990年11月16日)

試験研究は今 No.50「ワカサギの生態と資源動向について」(1990年11月16日)

Q&A? ワカサギの生態と資源動向について教えて下さい。

北海道におけるワカサギ漁獲量の変化
  結氷した湖や川にあけられた小さな穴から銀鱗が躍り出るワカサギ釣りは、北国ならではの冬の風物詩です。釣り場や漁場が湖沼や河川であるため、一般にワカサギは湖や川だけに棲む淡水魚と思われていますが、石狩川や海に通じている網走湖などに生息する天然のワカサギは海に下り再び河川や湖に遡上します。ワカサギは本来、サケに似た遡河性の回遊魚なのです。

  国内の天然ワカサギの分布は、日本海側では島根県以北、太平洋側では千葉県以北・オホーツク海に面する北海道の各地でみられます。ワカサギは冷水性魚類に属しますが、適水温範囲が0~18度と広く、塩分に対する適応性も強いため、全国各地の湖沼や人工湖、ため池に移殖され、移殖池も100ヶ所近いと言われております。移殖を含めたワキサギの生息最南端は鹿児島県の池田湖です。このように塩分に強く、また富栄養化にも強いため、海と連絡しない純淡水域を含め各地で繁殖がみられます。それでは、網走湖を例にして天然でのワカサギの生活史を紹介します。

  雪解けが終わった4~5月にかけて、ワカサギは網走湖に流入する河川に遡上し産卵します。ワカサギの卵は直径約1ミリメートルで、卵の一つ一つは放卵後すぐに砂礫や水草などに粘着します。5~6月に孵化した仔魚は、体長が4~6ミリメートル程度で湖に下り成長します。餌は主に動物プランクトンです。そして8月には体長3~5センチメートル程度まで成長し、一部のものが海へ下ります。11~12月には体長7~8センチメートルとなって再び湖に戻り、結氷した湖で越冬し、生まれてから満1年目の春、産卵します。その後、多くのものが死亡すると考えられています。これがワカサギの一つの典型的な生活史であり、年魚と言われている由縁でもあるのです。

  ところが、網走湖には3年以上生きるものが相当数生息していたことが過去に報告されていますし、最近の研究でも満2年目に初めて成熟する群や産卵後も生き残る群がいることなどが明らかになりました。こうしたことから、ワカサギは必ずしも年魚とは言えなくなったわけです。これらいろいろな群の生活史や、同じ所で生まれ育ったワカサギがどのようにしてそれらの群に分かれるのかは不明で、現在も調査研究が続けられています。

  このように同じ湖でもいくつかの群がみられますが、地域が変わるとさらに生活は異なります。石狩川では海からの遡上時期は産卵期の5月下旬で、網走湖とは大きく異なっていますし、また、流入河川のない湖などでは、湖岸を産卵場に使います。こうした環境に対する強い適応力と豊富な生活様式がワカサギの特徴的な生態と言えます。

  最近の北海道におけるワカサギの漁獲量は、400~700トンと比較的安定していますが、各生産地では大きな変動がみられます。ワカサギの場合、各地で孵化放流が盛んに行われており、その資源動向は人為的管理によるところが大きいといえます。しかし、放流数が多いほど生産量は高くなるとは限りません。これは閉鎖的な湖沼では、生残率や個体の成長が資源密度と密接に関係してくるためです。湖沼の生産力に見合った放流計画が必要ですし、自然産卵の多い生産地ではその規模を把握しておくことや、産卵場となる河川の環境保全も重要です。
(網走水試)

トピックス

中央水試構想設計競技最優秀作品決まる

  中央水産試験場は昭和6年に建てられ50年以上の歴史を持ちますが老朽化したため、平成5年から現在の場所に改築整備が行われます。改築構想設計案は、地域の風土にふさわしく、道民に親しまれるものとするため、広く公募され、50点の応募がありました。それらの中から審査委員会によって右の作品が最優秀作品として選ばれました。この最優秀作品は新しい中央水産試験場の建設設計に使用されることになります。

  なお、12月3日~7日に入賞作品展示会が道庁1階道民ホールで開かれます。

    • 中央水試構想設計競技最優秀作品