水産研究本部

試験研究は今 No.95「天然ヒラメと養殖ヒラメの成分と食味について」(1992年2月21日)

天然ヒラメと養殖ヒラメの成分と食味について

  特定海域養殖業推進調査事業として神恵内村珊内で行われている海中養殖したヒラメ、泊村で行われている陸上養殖したヒラメと余市前浜で漁獲した天然ヒラメの成分の違いを調べましたので、その報告をします。
 
  天然ヒラメと海中養殖ヒラメは6月、11月に、陸上養殖ヒラメは11月に分析を行いました。
    • 表1
    • 表2
 6月、11月のヒラメの一般成分は表1、表2に示しました。

6月では、、平均値を見た場合、海中養殖ヒラメは天然ヒラメに比べ、わずかに水分が少なく、粗たん白質が多く、粗脂肪が多いように思われました。しかし個体別に見ると、水分では、天然ヒラメで76.6パーセント、養殖ヒラメで76.8パーセントと同じような値のものがあり、個体差もあると思われます。

11月では、平均値を見ると、天然ヒラメ、陸上養殖ヒラメ、海中養殖ヒラメの順に水分が増加し、粗たん白質が減少、粗脂肪が増加の傾向が見られます。しかし天然ヒラメの水分値を見ると、71.2~76.8パーセントと個体差のほうが大きく、はっきりと差があるとは言い切れません。養殖ヒラメは、粗脂肪の多い個体が目立ちました。

6月に比べ11月では天然ヒラメの水分が減少し、粗たん白質が増加しました。しかし、養殖ヒラメではほとんど差が見られませんでした。これは養殖ヒラメが常に餌を与えられているからではないかと思われます。
表3
 全試料の脂肪酸組成は、表3、表4に示したとおりです。脂肪酸は、DHAの割合が一番多く、次いでC16:0,EPAの順です。少ない脂肪量ではありますが、動脈硬化を防止するといわれている身体に良い方のコレステロールDHA、EPAの割合が多いのが特徴と思われます。また、天然ヒラメと比較して養殖ヒラメの組成も変わりません。脂肪酸組成については、餌料による影響はないと思われます。そして、6月と11月の違いもほとんど見られませんでした。

  神恵内村で天然ヒラメと養殖ヒラメの食味試験を行いました。

  官能判定の結果、肉質の色調は、主に好まれると思われる透明感のある白さが、海中養殖ヒラメが72パーセントと高い評価を受け、陸上養殖、天然ヒラメはそれぞれ37パーセント、41パーセントでした。そして陸上養殖、天然ヒラメは赤っぽい、黒っぽいと評価する人がともに37パーセントありました。
表4
 歯ごたえは、ある程度の硬さのあるものが好まれると思われますが、海中養殖陸上養殖ヒラメとも普通と評価する人が多く、次に硬いとの評価でした。天然ヒラメは50パーセント以上の人に軟らかいと評価されました。

旨さは、海中養殖、陸上養殖ヒラメとも旨いと評価する人が65パーセント、72パーセントと多く、ついで普通であるとの評価でした。天然ヒラメは50パーセント以上の人が普通と評価し、ついで旨いとの評価であり、天然ヒラメのみが逆の評価でした。

脂肪の乗りについては、、白身の魚でもある程度の脂肪があるほうが好まれると思いますが、海中養殖ヒラメは、良いとする人が55パーセントと多く、陸上養殖ヒラメは、良い、普通がほぼ同じで、天然は、72パーセントの人が普通と評価しました。

以上の順位についてまとめると、色調は海中養殖ヒラメ、歯ごたえは陸上養殖ヒラメ、旨さは陸上養殖ヒラメ、脂肪の乗りは海中養殖ヒラメが高い評価となり、食味や好みについて、養殖ヒラメは天然ヒラメに比べて何ら劣ることはなく、むしろ好ましいと評価されました。
(中央水試加工部 主任研究員 加藤健仁)