水産研究本部

試験研究は今 No.561「サケ稚魚の成長およびエネルギー量に与える綿実油強化餌料の効果」(2006年1月18日)

はじめに

  サケ栽培漁業を安定的に継続するためには進んだコスト削減が必要な時期にきており、種苗生産における餌料費削減がそのひとつの方策と考えられます。成長向上に効果のある物質の餌への添加方法を確立することで、放流稚魚を早くに大型化することができ、しかも飼育にかかる餌料費のコスト低減にも繋げることができます。また、この添加餌料によって放流稚魚の持つエネルギー量を増加させ種苗の性質を向上することで、河川内や沿岸域での高い生き残りが期待されます。ご紹介する研究では、種苗生産における餌料費削減と放流稚魚の生残率向上を目的として、サケ稚魚の成長及びエネルギー量に与える綿実油強化餌料の効果を調べました。

実験方法

  平成17年1月12日に浮上した稚魚を、200尾ずつ5群に分け60Lアクリル水槽に収容しました。設定した5群は、(1)対照群、(2)魚肝油0.5パーセント、(3)魚肝油2.0パーセント、(4)綿実油0.5パーセント、(5)綿実油2.0パーセントとし、対照群には市販さけます配合餌料を、他の4群には配合餌料に各油脂を各重量パーセントの割合で加えたものを与えました。飼育は浮上時から3月10日まで水産孵化場で行い、期間中に各群合計200グラムの餌料が当たるように設定しました。飼育期間中の各群の成長率、餌料費、エネルギー増加率を対照群の値を100としたときの相対値で示しました。

結果とまとめ

  図1には成長率が、図2には餌料費が、図3にはエネルギー増加率が示されています。何も加えない対照群に対し、綿実油2.0パーセント強化餌料では成長が24パーセント向上、餌料費が10パーセント削減、エネルギー量が5.8倍に、綿実油0.5パーセント強化餌料では成長が17パーセント向上、餌料費が12パーセント削減、エネルギー量が5.9倍になることがわかりました。これらの綿実油の効果は、同濃度の魚肝油の効果よりも高いことが確認されました。以上の結果から、市販配合餌料へ綿実油強化を行うことで、サケ稚魚の成長向上とエネルギー量増加、餌料費の削減が図られることが明らかになりました。今後、本技術を事業化に繋げるための試験研究を水産孵化場で進めてゆきます。
(水産孵化場 養殖病理部 水野伸也)

    • 図1
    • 図2
    • 図3

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