はじめに
食品の安全・安心に対する消費者の関心の高まりを背景に,水産物についても,より鮮度が良く,品質の高いものを求める傾向が強くなっています。関サバ,関アジは,この鮮度,品質面での差別化を図り,「ブランド」を確立した代表です。
道内でも,高鮮度を特徴としたサンマやホッケが「青刀サンマ」,「歯舞一本立ちサンマ」,「大黒サンマ」,「海峡根ボッケ・バキバキ」などの名前を付けて生産されています。また,鮮魚の品質向上を目指して,活締め方法の講習会が各地で開催されており,生鮮魚の差別化の取り組みは,今後一層盛んになると思われますが,生鮮魚のブランド確立には,鮮度や品質の特徴をきちんと把握して消費者にアピールするとともに,その特徴を管理する生産・流通体制を確保する必要があります。
ここでは,試験研究は今No.564「サンマの鮮度について」に引き続き、現在,鮮度による差別化が行われ,さらに生きた状態で漁獲・流通させる研究も行われているサンマを例に,生鮮魚としての品質的特徴とブランドを確立するためのポイントなどを紹介します。
道内でも,高鮮度を特徴としたサンマやホッケが「青刀サンマ」,「歯舞一本立ちサンマ」,「大黒サンマ」,「海峡根ボッケ・バキバキ」などの名前を付けて生産されています。また,鮮魚の品質向上を目指して,活締め方法の講習会が各地で開催されており,生鮮魚の差別化の取り組みは,今後一層盛んになると思われますが,生鮮魚のブランド確立には,鮮度や品質の特徴をきちんと把握して消費者にアピールするとともに,その特徴を管理する生産・流通体制を確保する必要があります。
ここでは,試験研究は今No.564「サンマの鮮度について」に引き続き、現在,鮮度による差別化が行われ,さらに生きた状態で漁獲・流通させる研究も行われているサンマを例に,生鮮魚としての品質的特徴とブランドを確立するためのポイントなどを紹介します。
客観的指標で見る生鮮サンマの品質的特徴
鮮度の良い魚は,「刺身にできるほど活きが良い」と表現されるように,まず刺身食材としての消費が想定されることから,刺身の品質として重要な「歯応え」と「うま味」に関係する項目を中心に話を進めます。
サンマの鮮度と品質の関係を詳しく把握するため,人工的に飼育したサンマを活締め(海水-氷〆)し,鮮度の指標であるK値や硬直指数と刺身の歯応えの指標となる筋肉破断強度,水産物の主要なうま味成分であるイノシン酸量の変化を調べました。
活締め後のサンマを海水中で放血した後に水氷中で保管するとK値は5時間後から上昇し始めました。また,硬直指数は2時間程度で100パーセントに達した後,10時間後から徐々に低下しましたが,筋肉破断強度は5時間目から急激に減少しました。(図1)
このことは,K値で示される鮮度が非常に良好(K値10パーセント以下)で,尾を持ってピンと立つようなサンマでも,すでに身は柔らかくなっている可能性があることを示しています。
一方,うま味の成分であるイノシン酸は,5時間目以降から急激に増加し,筋肉の破断強度と逆の変化を示した。(図2)
これらのことは,実際の漁場で漁獲された天然サンマでも同様にみられ,活締め5時間以内の天然サンマのK値は,漁獲後,船上で海水-氷に浸漬して水揚げされた生鮮サンマ(「青刀」,「一本立ち」などの沖詰め製品)とほぼ同じレベルにありますが,筋肉破断強度は格段に高い値を示します。また,イノシン酸量は,鮮度が低下(K値が上昇)すると徐々に減少するものの,K値が10パーセント以下の生鮮サンマでは,活締め後5時間以内のサンマに比べて遥かに多くのイノシン酸が含まれています。(図3,4)
サンマの鮮度と品質の関係を詳しく把握するため,人工的に飼育したサンマを活締め(海水-氷〆)し,鮮度の指標であるK値や硬直指数と刺身の歯応えの指標となる筋肉破断強度,水産物の主要なうま味成分であるイノシン酸量の変化を調べました。
活締め後のサンマを海水中で放血した後に水氷中で保管するとK値は5時間後から上昇し始めました。また,硬直指数は2時間程度で100パーセントに達した後,10時間後から徐々に低下しましたが,筋肉破断強度は5時間目から急激に減少しました。(図1)
このことは,K値で示される鮮度が非常に良好(K値10パーセント以下)で,尾を持ってピンと立つようなサンマでも,すでに身は柔らかくなっている可能性があることを示しています。
一方,うま味の成分であるイノシン酸は,5時間目以降から急激に増加し,筋肉の破断強度と逆の変化を示した。(図2)
これらのことは,実際の漁場で漁獲された天然サンマでも同様にみられ,活締め5時間以内の天然サンマのK値は,漁獲後,船上で海水-氷に浸漬して水揚げされた生鮮サンマ(「青刀」,「一本立ち」などの沖詰め製品)とほぼ同じレベルにありますが,筋肉破断強度は格段に高い値を示します。また,イノシン酸量は,鮮度が低下(K値が上昇)すると徐々に減少するものの,K値が10パーセント以下の生鮮サンマでは,活締め後5時間以内のサンマに比べて遥かに多くのイノシン酸が含まれています。(図3,4)
客観的指標と官能評価の対応
客観的な指標で明らかとなった生鮮サンマの品質的特徴が,実際に刺身として食べたときに一般の消費者が認識できるかを官能試験により検証しました。
活締め2時間以内のサンマと水揚げ当日の生鮮さんまの刺身は,その違いが有意に識別され(危険率1パーセント),筋肉の破断強度が高い活締めサンマは「歯応え」の点で,また,イノシン酸量が多い水揚げ当日の生鮮サンマは「うま味」の点で,それぞれ好まれる(危険率1パーセント)ことが確かめられました。(図5)
活締め2時間以内のサンマと水揚げ当日の生鮮さんまの刺身は,その違いが有意に識別され(危険率1パーセント),筋肉の破断強度が高い活締めサンマは「歯応え」の点で,また,イノシン酸量が多い水揚げ当日の生鮮サンマは「うま味」の点で,それぞれ好まれる(危険率1パーセント)ことが確かめられました。(図5)
ブランド確立のポイント
これらのことから,活締めサンマは「歯応え」を,また,沖詰め製品のように鮮度の良いサンマは「うま味」を特徴とした刺身用食材として,それぞれ差別化が可能と考えられますが,それぞれのブランドの確立には,活締めサンマでは5時間以内の消費者への提供システム,沖詰め製品ではK値10パーセント以下での流通・消費システムの構築が,重要なポイントといえます。
なお,生鮮魚とは異なりますが,鮮度管理が行き届いた水揚げ当日の生鮮サンマを原料とした冷凍フィレーの生産は,刺身としての「うま味」を確実に消費者に届ける有効な方法と言えます。
なお,生鮮魚とは異なりますが,鮮度管理が行き届いた水揚げ当日の生鮮サンマを原料とした冷凍フィレーの生産は,刺身としての「うま味」を確実に消費者に届ける有効な方法と言えます。
おわりに
今回はサンマを例に,客観的な品質評価に基づく生鮮魚の差別化とブランド確立のためのポイントを紹介しましたが,生鮮水産物の品質評価の項目やその変化は,魚種により大きく異なります。地域ブランドは消費者からの評価の証でもあり,地域全体で考え,検証することが必要です。
水産試験場ではサンマ以外にも,ヒラメやババガレイ,ホッコクアカエビ,ニシンについて鮮度と品質の関係を調べ,「生鮮水産物鮮度保持マニュアル(北海道水産林務部発行)」にまとめています。今年度中には各漁協等に配付できる予定ですので,各地域での生鮮水産物のブランド確立に活用してください。
水産試験場ではサンマ以外にも,ヒラメやババガレイ,ホッコクアカエビ,ニシンについて鮮度と品質の関係を調べ,「生鮮水産物鮮度保持マニュアル(北海道水産林務部発行)」にまとめています。今年度中には各漁協等に配付できる予定ですので,各地域での生鮮水産物のブランド確立に活用してください。
(釧路水産試験場 加工部 辻 浩司)