水産研究本部

試験研究は今 No.591「ニシンの稚魚調査から将来の豊凶を予測する」(2007年5月7日)

はじめに

  北海道では1996年から日本海ニシン増大推進プロジェクトとして稚魚の放流や資源管理などによる資源の増大・安定方策の研究に取り組んでいます。対象としているニシンはかつての春ニシンではなく、石狩市厚田周辺を主な産卵場としている石狩湾系ニシンと呼ばれる群れです。

  これまでの調査で石狩川河口域にニシンの稚魚が集まってくることがわかっています。実際に、標識をつけて厚田や浜益で放流したものが3日後には石狩川河口で捕られていて、好んでここへ集まってきているようです。ところが調査を続けてみて、年によってここで捕られる天然ニシンの稚魚の量が大きく変動することがわかりました。では、このこととニシン資源の変動には何か関係があるのでしょうか?

調査方法

  中央水試では1998年から石狩川の河口の両岸で地曳き網による稚魚の採集調査を行っています(図1)。調査は毎年5月下旬から7月中旬の期間内に5~7回行いました。
    • 図1

結果

    • 図2
  調査中、地曳き網で捕れた天然ニシン稚魚の1回の曳き網での最大採集尾数を図2の棒グラフに示しました。年によって入網した稚魚の数が大きく変動していることがわかります。石狩湾系ニシンは2年ないしは3年後には成魚となって漁獲の対象となりますが、稚魚調査を行ってから2年後の2歳時の推定資源加入尾数(資源として新たに漁獲対象となった推定尾数)を図2の折れ線グラフに示しました。両者を比較すると、変動がかなり良く一致していることがわかります。

  これらの結果から、石狩川河口のニシン稚魚の量を調査することによって、2年後のニシンの資源予測に利用できる可能性があることがわかります。

おわりに

  2004年生まれのニシンまではこのように一致していますが、問題はこれまでの調査で最多の稚魚が見られた2005年生まれです。来年2008年にはこの2005年生まれのニシンが本格的に漁獲対象に入ってきます。2005年生まれのニシンが本当に多いのか?結果が楽しみです。
(中央水産試験場 資源増殖部 瀧谷明朗)

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