水産研究本部

試験研究は今 No.599「脂の乗った釧路のサバ」(2007年8月24日)

はじめに

写真 マサバ(上),ゴマサバ(下)
  サバが釧路に、12年ぶりにやってきました。平成17年の3,300トンを超す水揚げに続き平成18年は約1,900トン、サバが2年連続して釧路に水揚げされました。

  そこで、平成18年に釧路沖で漁獲されたサバについて、水分と脂肪の分析を行いましたので、その結果を紹介します。

釧路沖で漁獲されるサバについて

  平成17、18年と釧路港に水揚げされたサバは、生き残りの良い卓越発生群とされる平成16年生まれのものが来遊したためと考えられています。特に、平成18年に水揚げされた2歳魚は、釧路では実に30年ぶりに漁獲されました。しかし、残念なことにこの2年間の釧路沖におけるサバの漁獲期間は、8月下旬からの約2~3週間と短いものでした。

  日本で漁獲されるサバは、マサバとゴマサバの2種類ですが、そのうち一般的に市場では体表の腹側にゴマ状の紋様が見られるものをゴマサバ、紋様が見られず銀白色なものをマサバとしています(写真)。サバは日本各地に分布 して餌(主として動物プランクトン)を求めて群で行動していますが、マサバは釧路沖に来遊するような広範囲の海域を回遊するものと、ブランド名のついた「関サバ」や「松輪サバ」のようにごく限られた海域に生息するものがいます。一方、ゴマサバはマサバよりも比較的温暖な海水温を好むと言われており、本来はマサバと生息海域が異なっています。しかし、どちらも群を作って回遊し、餌も共通していることから、しばしば同じ時期に同じ海域を回遊することがあるようです。実際に、釧路沖で漁獲されたサバも、マサバとゴマサバの2種類が確認されており、当場資源管理部の調査では、平成18年の両者の漁獲量はほぼ同じでした。

サイズ別の肥満度および水分と脂肪

  分析試料は、昨年釧路沖で漁獲されたサバのうち、漁期の始め(8/23)と終わり(9/4)に漁獲されたマサバとゴマサバを用いました。体重が、600グラム以上700グラム未満を大、500グラム以上600グラム未満を中、400グラム以上500グラム未満を小の3サイズに分け、各4尾ずつ、体長と体重を測定して(図1)肥満度(=体重÷体長3×1000)を算出し、さらに筋肉の水分と脂肪を分析しました。

  分析試料における肥満度は、9/4のものは8/23のものに比べてマサバ、ゴマサバともに小さくなっていました(図2)。一方、脂肪は漁獲時期による差がマサバ、ゴマサバともに見られませんでしたが、大と中サイズではどの個体も20パーセントを超え、多いものは28パーセントもありました。また、マサバ、ゴマサバとも小サイズでは20パーセント未満の個体が見られ、平均値は大や中サイズと比べると低い傾向にありました(図3)。脂肪と負の相関が認められた水分(図4)は、漁獲時期やマサバ、ゴマサバに関係なく大や中サイズでは55パーセント前後であり、小サイズでは約60パーセントと大や中サイズに比べて高い値でした(図3)。

  スーパーなどでトロサバとして良く見かけるノルウェー産タイセイヨウサバの脂肪は約27パーセント(五訂 日本食品標準成分表)であり、平成18年に漁獲された大や中サイズの釧路のサバは、それに匹敵するぐらい脂が乗っていました。また、釧路で10万トンを超すようなサバの水揚げがあった昭和40年代の資料を見ても、平成18年に漁獲されたような30センチメートルを超えるサイズの脂肪は8月で約29パーセント、9月には約31パーセントもあり、8~9月にかけて釧路港に水揚げされるサバは非常に脂が乗っていることがわかりました。

  マイワシやサンマと同じように、サバの脂肪には動脈硬化や血栓などの予防に役立つEPAやDHAが豊富に含まれています。サバが釧路で今後も安定的に水揚げされるようになれば、「脂が乗っておいしく健康にも良い釧路のサバ」として、差別化がすすむことも期待されます。
    • 図1
    • 図3
    • 図4
    • 図5

おわりに

  この2年間のサバの漁獲は、地元釧路で大きな話題となりました。

  今春の日本海ではニシンの豊漁でにぎわいましたが、今秋もスーパーの鮮魚売り場に、脂の乗ったサバがたくさん並ぶことを願っています。
(釧路水産試験場 利用部 菅原 玲、宮崎亜希子)

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