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中央水産試験場

磯焼け漁場の機能回復

磯焼け海域でホソメコンブ群落を形成するための条件

磯焼け現象とは

北海道日本海南西部ではコンブ・ホンダワラ類等が消失し、海底では白い無節サンゴモとキタムラサキウニが目立つ磯焼けが発生しています(図1)。
磯焼け域ではウニ・アワビ類の餌となる海藻類が不足するので、磯根漁業の深刻な問題となっています。
    • 北海道日本海南西部の磯焼け地帯
      図1.北海道日本海南西部の磯焼け地帯

ウニ除去で判明したこと

磯焼け海域でウニ類の除去を継続したところ、最初にアオサ等の小型1年生海藻が出現し、除去の1年後にはコンブ・ワカメ等の大型1年生海藻の群落が形成され、2年後にホンダワラ類等の大型多年生海藻が優占しました(図2)。
このことから磯焼け海域であってもウニ類の除去により海藻群落が回復し、その植生は小型1年生海藻、大型1年生海藻、大型多年生海藻の順に遷移することが分かりました。
    • ウニ類除去後の遷移過程
      図2.磯焼け地帯の海底におけるウニ類除去後の遷移過程

コンブ群落の造成を自然に学ぶ

コンブ類はウニ・アワビ類の餌として好ましく、そのためコンブ群落を毎年安定して形成する技術の開発が要求されています。小樽市忍路湾での潜水観察によると、コンブ群落が安定して形成される場所では、ウニ類が夏に分布し、冬には逆にそこからウニ類が居なくなっていました。
この現象は、夏にはウニ類によって海藻類が食べられることで多年生海藻への遷移が妨げられ、しかもホソメコンブの芽生え・初期成長の時期である冬から早春にはウニ類が生息しないのでホソメコンブ幼芽の生存が保証されているからであると考えられます。
また同じ湾内であっても周年ウニ類が分布する場所は磯焼けとなり、周年ウニ類が分布しない場所は遷移が進んでホンダワラ類等の多年生海藻が優占していました。

フェンスによる実証試験

上記の観察結果を野外で検証するために、次のような試験を2年間行いました。
周年ウニ類が分布する忍路湾奥部の磯焼け地帯で、ウニ侵入防止フェンスを用いて冬だけフェンス内のウニ類を除去しました。
その結果、フェンス内だけにコンブ群落が形成されました(図3)。この結果は2年間とも同様であり、他の海域での実験でも確認されています
    • ウニ侵入防止フェンス内外の比較
      図3.磯焼け地帯の海底に設置したウニ侵入防止フェンス内外の比較

今後の課題

本研究により、磯焼け海域でコンブ群落を毎年生育させるための重要な条件の一つが、具体的に「夏にウニ類が分布し、冬には居ない」であると確かめられました。ただし、フェンスによりウニ類の食圧を制御してもホソメコンブの生育状況はフェンスの設置場所、水深、年による環境の違いによって異なることも明らかになっています。
今後、ウニ類の食圧を除いた環境下において、ホソメコンブの生育に適した環境を解明していきたいと思います。

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