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林産試験場

木質内装材の話

性能部性能開発科長 石井 誠


 

はじめに
住宅の内装材は,大変範囲が広く,床,壁,天井,室内ドア,収納扉,階段,現しの梁や見方によっては窓なども内装材としてとらえることができます。これらに共通する特徴は,身近に見たり触ったりするものである,ということです。そのため,これらのものに要求される特性としては,接触感,接触温冷感,視覚,音響などがあります。また,材料自体や施工時の接着剤などからでる揮発物質も考える必要があります。

 

木質内装材にはどのようなものがあるか

最近,ほこりやダニ対策といった健康面から木質床材を使うケースが増えています。床材には単層フローリングと複合フローリングがあります。単層フローリングはさらにフローリングボード,フローリングブロック,モザイクパーケットに分類されます。
フローリングボードは,一般住宅ではよく見られるもので,厚さ10mmから18mm,幅64mmから110mmの板をさね加工したものをならべたものです。
フローリングブロックは,板を2枚以上横張りして厚さ10mmから18mm,一辺240mmから300mm程度の正方形に加工したもので,コンクリートスラブに直張りしたものが多く見られます。
モザイクパーケットは,フローリングブロックに使うものよりさらに小さい材料を寄せ集めてモザイク状に仕上げたもので,主にコンクリートスラブ直張り用のものです。
複合フローリングは,単層フローリング以外のもので,よく見られるのは合板,LVL,MDFやパーティクルボードに化粧単板を貼ったものです。これは,価格が安く,施工しやすいため一般住宅には最も普及しています。しかし,表面仕上げ材が厚いもので2mm,通常0.5~0.6mmと非常に薄いため,耐久性,補修にはやや問題があります。


木質材料を使った壁材では,無垢材を用いた羽目板が最も一般的なものです。それ以外にも,最近は,合板,パーティクルボードや木質セメント板をそのまま内装材として使用するケースがよく見られるようになりました。これは,素材そのままを見せるというより表面を塗装して,装飾するというやり方が使われます。
また,内装材に木材をたくさん使えばよいと思われがちですが,必ずしもそうではないようです。例えば,写真1~3を見てどのように感じられるでしょうか。このような木材使用量が異なる写真パネルを見てもらって,どのように感じるかを試験した結果,木材使用量が部屋の表面積の70~80%の時が最も好まれると言うことが分かりました(図1)。

 

写真1
写真1 木材使用量0%の場合

 

写真2
写真2 壁の一部に木材を使わない場合

 

写真3
写真3 木材使用量100%の場合

 


 


図1

天井
天井は,直接手が触れる場所ではないので,意外に注目されない部位です。しかし,寝る時,特に寝たきりの病人などでは常に目に入ってくるものです。そのため,接触感より視覚的に好まれるものにする必要があります。
一般住宅の天井の形状は,水平に張られた平天井と,最近見られるようになった小屋裏部屋に使われる勾配天井があります。平天井には,木材の質感のある無垢板天井材や小幅板天井材などの無垢材と,価格が安く見た目が木材に見える突き板天井材やラミネート天井材などの化粧合板材があります。近年の住宅は,特に冬期間に部屋が過乾燥気味になるため,無垢材は,材料の乾燥が適切でないと狂いや割れを生じます。
勾配天井では直接手を触れることができるため,化粧合板材より無垢材が好まれます。また,天窓を取り付けることにより,明るい,開放的な部屋を創出することができます。

 

次に,木材を内装材に使用すると,どのような長所があるかを述べます。

木材の表面には,小さな凹凸があり,その表面で反射する光は乱反射します(図2)。そのため,印刷物などに見られる平面的な感じでなく,質量感を与えます。さらに,ぎらついた感じを軽減してくれます。
また,木材は紫外線を吸収する能力が大きいため,その反射光は目に優しい光になります(図3)。
木材の色は,黄色から赤色のものが多く,これらの色は暖かさを感じさせてくれます。このあたりが,木材を見て暖かいと感じる人が多い理由の一つです。

 

図2
光が繊維に平行方向に入射した場合
図2
光が繊維に直交方向に入射した場合
図2 木材表面の光の反射の模式図
日本木材学会編:すばらしい木の世界,p65(1995)

 

図3
1:ヒノキ板目ツキ板塗装無   2:ヒノキ板目ツキ板塗装有
3:メランチ(赤)柾目塗装無  4:チーク板目塗装無
5:ローズウッド柾目塗装無   6:ウルシ仕上げ(朱合塗)
7:WPC合板         8:コルクタイル・ワックス焼込
9:乾質コピー紙        10:乾質コピー紙(黄色蛍光マーカー塗)
11:畳    12:絹      13:人工絹     14:人工スエード
15:石膏   16:大理石    17:ステンレス

(反射率:硫酸バリウムの反射を100%とした相対値)
図3 各種材料の分光反射曲線
増田稔:木材学会誌,38(12),p1075-1081(1993)


木材は,音を吸収する能力(吸音力)は小さく(図4),厚い板で覆われた部屋は,残響時間が長くなり,会話や軽音楽には適さない音響条件となります。しかし,凹凸をつけたり,写真4のような格子状の構造にすることによって,適切な残響時間にすることが可能となります。ヨーロッパでは,木造のコンサートホールに失敗は少ないとよく言われますが,住宅の音響環境にもこのことは言えるのではないでしょうか。

 

図4
写真4
図4 各種材料の吸音率
写真4 格子状吸音壁パネルの施工例

吸放湿
木材は,空気中の水分を吸収したり放出したりする性質があります。そのため,木材を内装にはった部屋では,室内の湿度の変化がビニールクロスなどより小さく,壁表面への結露が少なくなります(図5)。

 

図5
図5 住宅内気候の経時変化
則元京、山田正:木材研究資料,No.11,p17-35(1977)

 

このように,木材や木質材料を内装材に使うと,健康面でのメリットは多く見られますが,前述のように使いすぎると逆効果になることがあります。そのため,他の材料の内装材との調和を考慮しながら,どういった材質,デザインのものを選べばよいかを決める必要があります。