森とみどりのQ&A(病虫獣害・虫害)
病虫獣害/虫害
Q3.イチイの葉が糸でつづられ、中に緑色の幼虫とサナギがいるが、虫の名前と防除法を知りたい。
Q4.プンゲンストウヒの葉が脱色したように白っぽくなるが、原因は?
Q8.ウメの木に毛虫が集団発生し、葉を食害されたが、害虫の種類と防除法は?
Q9.サクラの葉に赤くて細長いこぶのようなものがついているが、何か?
Q10.ハシドイの枝が粉のようなものに覆われ真っ白になっているが、何か?
Q11.ツツジやシャクナゲに寄生するカイガラムシの種類と防除法は?
Q12.ハマナスの葉裏に8月に丸いこぶがたくさんついているのを見つけたが、何か?
Q13.カラマツの葉に白いワタのような物がついているのを6月に見つけたが、これは何か?
Q14.トドマツ、カラマツ、アカエゾマツの若齢造林地に発生するアブラムシの種類と防除対策は?
Q15.カラマツに発生しているヒラタハバチ類について知りたい。
Q16.カラマツの球果を加害する害虫の種類と、被害球果の見分け方を知りたい。
Q18.カラマツ林分の一部を皆伐し放置しておいたところ、翌年、近くのカラマツ生立木がカラマツヤツバキクイムシの加害で枯損した。今後の対処法は?
Q19.カラマツが5月に真っ赤になった。害虫の種類と生態を知りたい。
成虫は茶色の1cm強のコガネ虫で,空知地方では6月下旬~7月上旬に現れます。成虫は日中は草むらや木の根元に潜んでいますが、日没直後に地上20~30cmの高さをゆっくりと飛び回ります。成虫を捕まえて駆除します。
A3.イチイの葉をつづって食べる主な害虫としてマツアトキハマキ、イチイオオハマキ、イチイヒメハマキがあります。以下の点で区別できます。
マツアトキハマキ | 体は緑色、頭部につやがある。被害時期は5月下旬頃。 |
イチイオオハマキ | 体は緑色、頭部につやがない。被害時期は7月。 |
イチイヒメハマキ | 体は淡い赤褐色。被害時期は5月下旬頃。 |
庭木や街路樹のイチイに多発することがありますが、実害が少ないので駆除の必要はありません。
A5.マツ類を加害するアオムシやイモムシとして以下の3種のハバチ(葉蜂)の幼虫が知られています。
マツノキハバチ | 体は灰色から黒。5~6月に発生。 |
マツノミドリハバチ | 体は緑色、黒い筋がある。7~8月と10月に発生。 |
マツノクロホシハバチ | 体は黄色、頭は黒。9~10月に発生。 |
常緑針葉樹は丸坊主にされると枯れることがあるので、幼虫をみつけたら取り除きます。なお、蜂の仲間ですが、成虫は針がなく人を刺すことはありません。
葉が食い尽くされた枝は生きていることもあるので、翌春に芽吹くかどうか確認してから処理するのが良いでしょう。
A7.サクラには様々な毛虫がつきます。主な種類と被害時期は以下の通りです。
エゾシロチョウ | 背中は黒で茶色の2本の筋があり、腹面は灰色、毛は白っぽく、短い。 被害時期は5月中旬~6月上旬。成虫は白い美しい蝶。 ![]() |
オビカレハ | 茶色で多数の筋があり、大きくなると頭や背中が青っぽくなる。 被害時期は5月中旬~6月上旬。 ![]() |
マイマイガ | 頭は茶色~灰色、黒い八ノ字の紋がある。体は黒から灰色、 模様は複雑で赤、黄、青、オレンジなどの斑紋がある。 被害時期は6月中旬~7月上旬。 ![]() |
モンクロシャチホコ | 体は赤紫がかった黒。毛は長く淡黄色。 被害時期は8月。 ![]() |
エゾシロチョウやマイマイガのように食害時期が春~初夏の場合、サクラは2週間ほどで再び葉を付けるのであまり心配する必要はありません。モンクロシャチホコのような夏の食害では再び葉を出すことなく枝が枯れる場合がまれにあります。幼虫をみつけたら取り除いて駆除します。エゾシロチョウの幼虫は枯れ葉を枝に糸で縛り付けて越冬するので、冬の間、枝に枯れ葉が付いているときは除去します。マイマイガは木の幹などに直径2~3cmほどのうす茶色の綿のかたまりのような卵を産み、卵で越冬するので、秋から冬の間に卵を取り除きます。
なお、これら4種の毛虫の内、マイマイガは卵から孵ったばかりの幼虫のときは毒毛を持ち、触ると皮膚炎を起こします。マイマイガについてはQ23以下をご覧ください。なお、毛虫は毒毛がなくても、毛が皮膚に刺さる可能性があります。幼虫を取り除くときはゴム手袋をしてください。
薬剤で防除する場合には、取扱説明書に従って使用し、周辺に飛散しないよう注意してください。様々な樹木に広く適用できる普通物(人畜毒性が低い物質)の農薬としては、MEP(スミチオン)乳剤、アセフェート(オルトラン)水和剤、エトフェンプロックス(トレボン)乳剤などがありますが、適用できる害虫の種類が限られていますので、取扱説明書で確認してください。また、果樹などの食用作物では、使用できなかったり、使用方法が異なったりする場合があるので、取扱説明書で確認してください。
なお、白い部分は蝋(ロウ)で、これを熱で溶かし冷水中で固めたものをイボタロウ(虫白蝋)といい、昔はロウソク、止血剤などに用いられたそうです。
白くよく目立つ虫なので、ブラシなどで擦り落として駆除します。
被害により木が衰弱するようなことはありませんが、気になるときは虫こぶを取り除きます。秋に落下した虫こぶ集めて処理するのもよいでしょう。
春~初夏にジメトエート粒剤を根元の周囲約10~15cmの円内に散粒し、かき起こしするか軽く覆土します。
これらヒラタハバチ類は食葉性の害虫です。食害により直接カラマツが枯れることはありませんが、激害が3年続いた林でカラマツヤツバキクイムシの2次被害による枯損の発生が観察されています。
いずれの種も成虫は6月頃出現し、幼虫は7月頃カラマツの葉を食害します。大発生地では7月下旬~8月上旬頃、カラマツが葉を失って赤くなりますが、2~3週間後には再び新葉を展開します。
被害を予防するには丸太を林内に放置しないことが重要です。搬出できない場合は剥皮するのが最も有効です。
キクイムシの被害を受けた生立木は普通、伐倒せず放置します。これは、伐倒により周囲の無被害木が傷つき、キクイムシの加害を受けやすくなると考えられるからです。苗木を植え込むなどのため、被害木の伐倒を要する場合は、周囲の無被害木を傷つけないよう注意し、伐倒後は剥皮して、中の虫にMEP乳剤を散布して駆除します。
被害は夏には緑を回復するので分からなくなります。カラマツを枯らすことはありません。しばしば、広域に大発生しますが、1~2年で終息します。
防除法としては、秋に幼虫が目立つようであれば、幹にすべりやすい幅広いテープを隙間なく巻くと、春に登ってくる幼虫はすべって登れなくなります。テープは、ササなど下草より高い位置に巻くこと、そしてトドマツに隣接する他の樹木にも巻くことが必要です。
予防としては、丸太を土場に置く期間はできる限り短くし、長くても1年を越えないことが重要です。また、被害木を製材した際にでる端材に幼虫が残っている可能性があるので、端材も放置せず早めに焼却などして処理します。
マイマイガの幼虫は5~7月に葉を食害します。カラマツやカンバ類など落葉樹で激しい被害が発生しますが、枯れることはほとんどありません。幼虫は落葉樹を食べつくすと、近くにある常緑針葉樹、農作物、草本などを食害することがあります。
雌成虫は8月上中旬頃の夜間、照明に集まり問題になることがあります。また、雌成虫は照明近くの壁や電柱などに産卵します。翌春に卵から孵化した幼虫に触れると皮膚炎を起こします。孵化幼虫は風に乗って分散するため、人に付着したり、家屋内に侵入しやすく、注意が必要です。
生態・被害・防除の詳細については、こちらをご覧ください。
→マイマイガの生態・被害・防除 Q&A (PDF,630KB)
被害によりカラマツが枯れることはほとんどありませんが、食害後に台風などによる塩風害が発生したり、幹に潜るカミキリムシやキクイムシの被害が発生し、木が枯れた記録が数例あります。
生態・被害・防除の詳細については、こちらをご覧ください。
→カラマツハラアカハバチの特徴・生態・被害について (PDF,935KB)