法人本部

第10話 屋根雪対策

屋根雪対策 (H26.1)

道総研北方建築総合研究所 堤 拓哉(つつみ たくや)

  北海道における雪の事故による死傷者数の推移をみると、2008(平成20)年度以降、毎年約100人ずつ増える状況にあり、昨冬は515名と過去最悪の被害となりました。死傷者数が増えた要因ですが、近年、日本海側の降雪量が増加傾向にあることが挙げられます。また、高齢化率が毎年着実に上昇していることも少なからず影響していると思われます。雪の事故による死傷者数の半数以上は65歳以上の高齢者が占めており、年齢別に雪の事故リスクを試算すると、65歳以上の高齢者が雪の事故に遭うリスクは65歳未満の約3.5倍になります。雪下ろしや落氷雪などの屋根雪事故は、雪の事故全体の約80%を占めています。特に、屋根やはしごからの転落など雪下ろしに関連する事故は、全体の60~70%を占めています。

現在、北海道では新築住宅の55%が「無落雪屋根」です。屋根雪対策は屋根の形状ごとに対策が異なりますので、それぞれの屋根形状でおきる問題を整理する必要があります。無落雪屋根でおきる雪の問題を整理すると、屋根の雪庇(せっぴ)や大雪時の屋根雪荷重の増加、2階の窓や設備等が雪で埋没することが挙げられます。これらの問題解決には、雪下ろしが必要となります。屋根上の雪を融かす方法も考えられますが、融雪水の凍結により氷柱(つらら)の発生を招くほか、エネルギ-消費の増加にも繋がります。雪庇の対策については、立地場所の冬の卓越風(※)を調べた上で雪庇のできる位置に配慮した設計を行うことが最も重要です。雪庇の発生を軽減あるいは除去する対策には、ヒ-タ-、フェンス等の設置や人力での除去がありますが、それぞれのメリット・デメリットを勘案して選択します。人力で除去する場合には、転落事故防止のため命綱などの安全装具を使用します。

  落雪屋根の雪対策については、落雪の範囲を適切に評価した上で、雪が落ちても問題にならない位置に雪を落とすような設計が最も重要です。また、屋根形状が複雑だと雪が落ちないケ-スもみられるので、できるだけシンプルな屋根形状にします。近年では、太陽光発電パネルを屋根に取り付けるケ-スもみられますが、パネルからの落雪による事故も増えていますので、注意する必要があります。勾配屋根における雪下ろしは、屋根材が金属板のため非常に滑りやすく、大変危険です。安全確保に自信がない場合は、専門業者に依頼するようにしましょう。北方建築総合研究所では、屋根雪対策に関する資料をホ-ムペ-ジにて公開しておりますので、ぜひご利用ください。

※卓越風・・・ある地域である期間内に最も吹きやすい風 (例 偏西風など)


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屋根雪対策に関する資料(北方建築総合研究所HPから)