温暖化5 2050年に向けた家庭部門のCO2排出量の将来推計
はじめに
寒冷地である北海道では、主に暖房・給湯向けにエネルギーを使用している家庭部門のCO2排出量の割合が全国と比較すると高い傾向があります(図1)。

道は、2020年3月に、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロとする「ゼロカーボン北海道」の実現を目指すことを表明しました。ゼロカーボン北海道の実現に向けて、建築物の更なる省エネルギー化に加え、再生可能エネルギーを最大限導入していくことが不可欠です。
北海道地球温暖化対策計画(第3次)改訂版によると、CO2排出量の多い家庭部門には、2030年までに2013年比で47%削減という高い目標が設定されていますが、2050年にはどの程度削減できるのでしょうか?
家庭部門のCO2排出量の将来推計
そこで、道総研建築研究本部では、2050年のゼロカーボン北海道に向けて、住宅のZEH化※や省エネ改修などの将来のCO2排出量の削減に寄与する様々な対策の実施や人口減少といった社会状況を考慮し、家庭部門のCO2排出量を推計しました(図2)。
この結果、人口減少による世帯数の減少の影響によってもCO2排出量は削減されますが、新築住宅のZEH化、既存住宅の設備改修など様々な対策を講じることにより、2050年のCO2排出量を2013年比で64%削減できることがわかりました。この推計では、住宅の省エネ化と再生可能エネルギー導入による削減効果を反映していますが、将来的な電源や燃料の脱炭素化による削減分は含んでいないため、これらの取組みと合わせてゼロカーボン化を目指していくことが必要です。
また、新築住宅は、人口減少や価格高騰などの影響により、建設戸数が減少傾向にあります。このため、家庭部門のCO2排出量の削減には、既存住宅の対策が非常に重要であり、効果のある断熱改修や設備改修などのリフォームをいかに推進していくかが重要な鍵となります。
※ZEH:ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略語。高断熱化と高効率設備の導入に加え、再生可能エネルギー等の導入により、年間の一次エネルギー消費量の収支ゼロを目指した住宅。

今後の取組み
今後、道総研建築研究本部では、費用対効果の高い既存住宅の性能向上リフォーム技術の開発などに取り組んでいきます。また、住宅をはじめとする建築物の省エネルギーに関する調査研究に取り組んでおりますので、ご興味のある方はご連絡ください。
(阿部 佑平 建築研究本部 北方建築総合研究所 建築研究部)