法人本部

データで見る北海道の今と未来

食1 進化し続ける北海道産小麦

はじめに

皆さんは北海道産小麦を食べたことがありますか?
気づいていなくても、皆さんは間違いなく道産小麦を食べていると思います。北海道は小麦の大産地であり(図1)、また、うどん用小麦の自給率は60%と高く、みなさんが10杯のうどんを食べたとすると6杯は国産、さらにそのうち4杯は北海道の小麦でできている計算になります。道産のうどん用小麦は、ほとんど全て道総研が育成した「きたほなみ」であり、道総研では、さらにたくさん収穫でき、病気に強く、品質の良い小麦の新品種を作るために日々努力しています。 

図1 都道府県別の小麦の生産量
図1 都道府県別の小麦の生産量

たくさん収穫できる小麦を作る

限られた面積と労力の中で、たくさん収穫できる小麦は非常に重要です。古い品種と新しい品種を並べて栽培すると、新しい品種では、実に30%も多く小麦が収穫できます(図2)。この30%は金額に換算すると年間約450億円分になり(販売価格のみ考慮、北海道の小麦生産量より計算)非常に大きな経済効果を生み出します。

図2 品種の育成年と収量
図2 品種の育成年と収量
(面積あたりの収穫できる小麦の量)

品質の良い小麦を作る

たくさんの小麦が収穫できたとしても、品質が悪いと買ってもらえません。かつては、うどん用小麦はオーストラリア産が最も品質が優れ、道産を含む国産小麦は品質が劣るとされていました。道総研ではこの評価を覆すために、オーストラリア産に追いつき、追い越すことを目標に品種改良に取り組んできました。現在の品種「きたほなみ」では、品質の重要な項目の一つであるうどんの色(鮮やかな黄白色が良いとされている)はオーストラリア産小麦と同等以上と評価されています(図3)。

図3 うどんの色の改良の歴史
図3 うどんの色の改良の歴史
写真 「北見95号」と従来品種のスポンジケーキ
写真 「北見95号」と従来品種のスポンジケーキ
「北見95号」のスポンジケーキはキメが細かく口溶けが良い

新たな用途への取り組み

品種改良の成果もあり、うどん用では道産小麦のシェアは高いのですが、パン用や菓子用では今でも輸入小麦が主流です。このため道総研では近年、パン用や菓子用の品種改良にも力をいれています。その成果として、2020年に北海道で初めての菓子用小麦の新品種「北見95号」が誕生し(写真)、「北海道白」(ほっかいどうしろ)というブランド名で流通することが決まっています。

これから

品種改良には終わりがなく、より優れた品種を作り続けることが求められます。小麦を栽培する生産者、小麦粉に加工する製粉会社や小麦粉を製品に加工する実需者、それを食べていただく消費者の皆さんに喜んでもらえる品種を作ることを目標に、引き続きがんばっていきたいと思います。

(大西志全 農業研究本部 北見農業試験場 研究部)