法人本部

データで見る北海道の今と未来

食3 ホッケ資源の収益的な有効活用に向けて

はじめに

ホッケは北海道のソウルフード、馴染みのある魚で、国内のホッケの98%を北海道が水揚げしています(2023年海面漁業生産統計調査)。しかし、2010年以降漁獲量が大きく減少し、全国的な魚食低迷もあり、ホッケの消費が伸び悩んでいます。そこで、全国の消費者にアンケート調査を行い、ホッケの訴求ポイントを探り、消費拡大に向けての基礎データを収集しました。

アンケート調査から

ホッケは道外の地域では「開き干し」以外の食べ方が普及しておらず、さらに開き干しで重視するのは「脂の乗り」であることが分かりました。なお、国内の魚種別の開き干し生産量は、アジやサバを抑えて、ホッケがトップです(2023年漁業センサス概数値)。

ホッケの脂の乗り(脂質含量)の変化

アンケート調査の結果、脂の乗った開き干しは消費者の購買意欲に働きかける効果が高いと考えられることから、2020年に漁獲されたホッケの脂質含量を調査しました。

ホッケは全道で漁獲されますが、最も漁獲量が多い振興局は後志総合振興局で、開き干しの市場取扱量も全道の約50%を占めることから、後志産を試料としました(2023年札幌市中央卸売市場年報)。

最初に、7月のホッケについて体重別に、続いて月別に雌雄各8尾以上(総数838尾)の脂質含量を測定しました。図1からホッケの脂質含量は体重とは関連がなく、オスのほうがメスよりも多く含まれている傾向があります。

図1 ホッケ体重別の脂質含量(7月)
図1 ホッケ体重別の脂質含量(7月)

次に、月別の脂質含量の変化をみると、脂質含量は夏季に多くなり、年間通じてメスよりオスのほうが多いことが分かりました(図2)。これは、オスでは脂質を産卵期の縄張り争いや、生み出された卵を孵化するまで護る行動のエネルギー源として利用しているためと考えられます。

図2 ホッケ脂質含量の月別変化(2020年)
図2 ホッケ脂質含量の月別変化(2020年)

脂質含量と開き干しの満足度の関係

つぎに、脂質含量が明らかなホッケを用いて開き干しを製造し、職員とその家族の総勢266名が喫食しました。満足度は、不満足1、やや不満足2,普通3、やや満足4、満足5で数値化しました。

ホッケの脂質含量は4%未満では、脂がのっていないとの意見から満足度が低く(評価3未満)、6~8%未満の満足度が最も高く(評価3.9)、それ以上脂質含量が多くても、必ずしも高評価にはつながらないことも分かりました(図3)。

図3 ホッケの脂質含量と満足感の関係
図3 ホッケの脂質含量と満足感の関係
図中の網掛けについて:「脂質含量2%未満」と「2-4%未満」の
ホッケ開き干しは、評価3未満となり低評価であった。

将来に向けて

消費者は安定した品質、当たりはずれのない美味しいホッケの開きを求めています。このため、道産ホッケ資源の収益的な有効活用には、脂の乗ったホッケを選別し、少ない漁獲で高く販売することが重要となります。しかし、現状では果物の糖度表示のようにホッケの脂質含量を個体別に判別することは難しいため、今回の調査から、開き干しは「夏季」に水揚げされた「脂の乗った」ホッケで製造することを推奨します。

また、水産試験場では開き干し以外にも、鮮度保持による刺身商材の開発や、脂質含量の少ないホッケをカマボコ原料として活用するための試験も行っており、これからも道産水産物の有効利用を通じて持続可能な本道水産業の発展に貢献していきます。

(辻 浩司 水産研究本部 中央水産試験場 加工利用部)